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助産師さんに訊く!授乳のお悩み相談室vol.1「吐き戻し」編

2025.07.02

授乳後に毎回吐き戻したり、ゲップが出なかったり、ちゃんと飲めているのか不安になったり…。
授乳の悩みは、尽きませんよね。
今回は、授乳にまつわる不安やお悩みについて、助産師の高須かおりさんにインタビュー。
yamatoyaで実施したアンケートで挙がった声についても、答えていただきました。

教えてくれた人
助産師/高須 かおり さん

母乳相談や育児相談、ねんねや離乳食についての相談対応、産後ケアなどを、自宅へ出張するかたちで個別にサポート。個人向けのほか、自治体からの派遣で新生児訪問も行っている。産前から産後のママのあらゆる悩みの相談相手として、一人ひとりに寄り添うサポート活動を展開。「食べる(授乳)・眠る・遊ぶ」を中心に子どもの健康とママパパが安心できるサポートを大切に活動中。「乳幼児睡眠アドバイザー」や「離乳食アドバイザー」のほか、マタニティヨガやベビーマッサージ等のインストラクター資格も多数。
https://www.instagram.com/jyosanshi.an/

 

そもそも赤ちゃんは「吐き戻しやすい」未熟な構造

ーyamatoyaがSNSで行った授乳についてのアンケートには、いろいろな項目のお悩みがありましたが、比較的多かったのが「吐き戻しが多いときはどうすればいいですか?」というお悩みでした。

赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲むたびに吐き戻すと、心配になると思います。
ですが、そもそも赤ちゃんは「吐き戻しやすい」胃の形をしているため、吐き戻しはごく普通のことだと捉えてほしいです。

人間の赤ちゃんは、他の多くの動物と比べて、非常に未熟な状態で生まれてきます。
たとえば、野生動物の多くは生まれて数時間で立ち上がり歩き出しますが、人間の赤ちゃんは歩けるようになるまでに何ヶ月もかかるんですよね。
これは、体のすべての機能や構造が、まだ発達途中のまま、生まれてくるからです。

その未熟さは、内臓の構造にも見られます。
大人の胃と違って、赤ちゃんの胃は「とっくり型」と呼ばれる、縦長のまっすぐな形をしています。さらに、胃の入り口の筋肉(噴門)もまだ未発達でゆるいため、胃の内容物が逆流しやすく、ちょっとした刺激でも吐いてしまうことがあります。

イメージ的には、瓶を横に倒すと中身が少し漏れ出てしまうような感じ。
それこそ妊娠中の赤ちゃんの胃は、ビー玉くらいの大きさしかなく、生まれてからも少しずつゆっくりと成長していきます。
新生児から生後半年くらいまでは、そもそも体の構造的に「吐きやすい」状態が続きます。

「吐くこと」自体は、赤ちゃんにとって自然な反応でもあります。
そもそも、赤ちゃんの体の仕組みによるものだということを知っておくと、少し安心して見守れるかもしれませんね。

 

ーなるほど。少しでも吐き戻しにくくするために、授乳後にできることはありますか。

やはりシンプルなのは、おっぱいやミルクを飲んだあとに、ゲップをさせてあげることですね。
ゲップが出ないと、胃の中に空気がたまって、吐き戻しや不快感の原因になることがあります。

ゲップをさせた後や、なかなか出ない場合は、しばらく縦向きに抱っこする、仰向けではなく横向きに寝かせてあげる、といった工夫で、吐き戻しを軽減できることもあります。

赤ちゃんが吐くのはよくあることではありますが、ごく稀に、噴水のように勢いよく吐く場合や、何度も繰り返して大量に吐くなど、いつもとは違う病的な吐き方をうする場合があり、そうしたときは注意が必要です。

 

ー「いつもと違う」というのは、確かに心配ですね。

吐き戻し以外にも、日々赤ちゃんと一緒に過ごしている中で、「なんだかいつもと違うかも」「ちょっと気になる」と思う瞬間って、あると思うんです。その「なんか気になる…」というママやパパのセンサーって、とても大事なサインだと思うんです。

「気にしすぎかも…」と、自分を押さえつけることはせずに、なんかおかしいな、と思ったら遠慮せずに医療機関に相談してみましょう。
それでもし「これは大丈夫ですよ」と言われたら、それはそれで安心できますから。

私は、毎日一緒に過ごしているママ(やパパ)の直感って、絶対あると思います。遠慮せずに、相談してみてくださいね。

ゲップが得意な赤ちゃん、おならが得意な赤ちゃん

ー先ほど、ゲップの話がありましたが「うまくゲップが出ないな」というときは、どれくらいを目処に諦めたらいいんでしょう?

そもそも赤ちゃんの中には、ゲップが上手に出せる子もいれば、ちょっと苦手な子もいます。
ゲップがあまり出ない子でも、かわりにおならとして下から空気を出していることもあるので、「上から出すか、下から出すか」の違いとも言えます。

 

ーなんと!

「ゲップがうまく出なくて…」と相談をくれるママに、「おならはよく出ますか?」と聞いてみると、大体「すごく出ます!」と返ってくることが多いです。
そういう場合は「この子は、ゲップよりもおならが上手なんだね」と、受けとめていただいて大丈夫です。

また、授乳方法によっても空気の飲み込みやすさは変わります。
たとえば、哺乳瓶での授乳では飲み終わりに空気を一緒に吸い込んでしまうことが考えられるため、ゲップをしっかり出してあげたいところです。
一方で、母乳の場合は、うまく吸えていれば空気をあまり飲み込まないため、「そもそもゲップが出ない」ことも珍しくありません。

夜間授乳では、赤ちゃんがそのまま寝落ちしてしまうこともありますよね。
「ゲップを出さなきゃ」と無理に起こすより、赤ちゃんの様子を見ながら、無理のない範囲でケアしてあげることが大切です。

 

ーそのほか寄せられた相談には、「量がきちんと飲めているか不安」という声も多かったです。

赤ちゃんがきちんと母乳やミルクを飲めているかどうかを見極めるには、やはり体重の増え方をチェックするのが一番わかりやすい指標です。
もし定期的に体重を測る機会があれば、栄養が足りているかどうかの確認に役立ちます。

とはいえ、日々の育児の中で毎回体重を測ったり、授乳量を細かく記録したりするのは難しいもの。
そこで、私たちは、おしっことうんちの「回数」を、目安としてお伝えしています。

たとえば、生後1ヶ月を過ぎた頃からの目安としては、おしっこが1日6〜8回以上出ていれば、十分に水分が取れているサインといえます。
うんちは1日1回以上が目安になりますが、こちらは赤ちゃんによって個人差が大きく、2〜3日に1回でも元気で機嫌がよければ心配はいりません。一方で、1日に2〜3回と頻繁に出る子もいて、どちらも正常の範囲内です。

おしっこについては、最近の紙おむつの吸収力が高いため「回数が少ないかも?」と感じることもあるかもしれません。
実際には2〜3回分をまとめて吸収しているケースも多いため、交換のタイミングだけでなく、吸収された量や時間の経過も合わせて見るようにするとよいでしょう。

どうしても「飲めているか」「足りているか」ばかり気になってしまいますが、「出すこと」も、赤ちゃんの体からの大切なメッセージです。
無理のない範囲で観察しながら、赤ちゃんの健康と成長を見守っていけるといいですね。

 

ママ自身が「どうしたいのか」が、一番大切

ー「母乳orミルク」に悩むママからの声も多かったです。高須さんのところにも、そうしたお悩みも多いですか。

そうですね。永遠のテーマだと思います。
私は、一人の助産師として「母乳はとてもすばらしい」と思っています。
でも同時に「母乳じゃないとダメ」だとは、まったく思っていません。

「この育て方がベスト」という答えはありません。
一番大切なのは「ママ自身、あなた自身がどうしたいか?」です。

赤ちゃんとの相性や体重の増え方、上のお子さんの育児との兼ね合い、お仕事の予定など、家庭の事情は本当に人それぞれです。

ですので、「母乳なのか?ミルクなのか?」という結論ではなく、ママ自身が「どうしたいのか」という希望を、一緒に見つけていくようにしています。
できれば妊娠中から、「自分は、どうしたいのかな?」と、出産後の生活のイメージを考えておくと、生まれてからの選択が少し楽になることがあります。

 

ーなるほど。どちらかが優れているとか、メリットデメリットの話ではなく、本人が「どうしたいのか」が大事なんですね。

もちろん、生まれてみたら赤ちゃんの性格上、吸い方がうまくいかなかったり、自分の体調が思うようにいかなかったりして、考えや状況が変わることもあるかもしれません。
それで、思い描いていた授乳スタイルにならなくても、まったく問題ありません。

大事なのは「どうしたいのか」という意思を、ママ自身が考えること。

母乳も、ミルクのこともよく知った上で「どれがいい」ではなく、「どのスタイルが自分に合いそうか?」をイメージしてほしいと思っています。

入院中の病院の方針や、助産師の声に迷うこともあるかもしれませんが、そんな時はぜひ、「私はこうしてみたい」と、言葉にしてみてください。
私は、ママが決めた道を進めるように、どんな選択でも応援したいと思っています。


***

 

授乳に「正解」はありません。赤ちゃんの様子、自分の体調、家族との暮らし。どれも日々変化していくからこそ、悩むのは当然のことなんですね。
「一番大切にしてほしいのは、自分はどうしたいか」という、高須さんの言葉が沁みました。

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Profile

助産師

高須 かおり

母乳相談や育児相談、ねんねや離乳食についての相談対応、産後ケアなどを、自宅へ出張するかたちで個別にサポート。個人向けのほか、自治体からの派遣で新生児訪問も行っている。産前から産後のママのあらゆる悩みの相談相手として、一人ひとりに寄り添うサポート活動を展開。「乳幼児睡眠アドバイザー」や「離乳食アドバイザー」のほか、マタニティヨガやベビーマッサージ等のインストラクター資格も多数。 https://www.instagram.com/jyosanshi.an/

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