赤ちゃんの肌って、いつもすべすべで気持ちいい…と思いきや、実はとってもデリケート。
とくに赤ちゃんや小さな子どもは皮膚が薄く、バリア機能も未熟なため、ちょっとした刺激や環境の変化が肌トラブルにつながることもあります。
今回は、小児科(呼吸器・アレルギー科)での看護経験を持ち、現在は医療的ケア児の訪問看護に携わっているsui mamaさんに、日常の保湿ケアや乳児湿疹などについて、子どもの肌ケアのポイントをお聞きしました。
《教えてくれたひと》
小児科看護師
sui mamaさん
(第3期 yamatoyaアンバサダー)
2024年12月生まれの女の子のママ。小児科看護師として約8年の経験をもち、これまでに呼吸器疾患やアレルギー疾患のある子どもたちの看護を中心に担当。皮膚トラブルや食物アレルギーへの対応、日常のスキンケア指導経験も多数。2020年より、医療的ケアが必要な子どもたちを対象とした小児訪問看護師として活動(※現在は育休中)。在宅での看護ケアやご家族のサポートに力を入れている。第3期 yamatoyaアンバサダー。
instagram: @niziiro__baby
保湿習慣が、我が子の未来の体質につながる!?
Q.まずは、子どもの肌の「保湿」について、教えてください。
子どもの保湿ケアは季節を問わず、毎日してほしいと思っています。
赤ちゃんの体は7〜8割が水分でできています。肌は潤っているように見えますが、実はとても薄くてバリア機能も弱いため、乾燥しやすく傷つきやすいです。
さらに、赤ちゃんは自律神経が未発達なうえ、基礎代謝も大人の2〜3倍。夏に限らず汗をかきやすく、汗が蒸発することで肌の水分まで奪われてしまうため、知らないうちに肌が乾燥してしまいます。
また、汗をかいたときはシャワーや汗拭きなどで清潔に保つことが大切ですが、汗を拭くことでバリア機能も同時に落ちてしまうため、その後はしっかり保湿ケアをすることが重要です。
乾燥が目に見えて気になる冬に比べて、夏は「保湿しなきゃ」という意識が薄くなるかもしれませんが、子どもの肌は一年を通してスキンケアが必要です。
「肌を清潔に保つ」「肌荒れを防ぐ」といった、日常的なケアの側面だけでなく、最近では乳児期のスキンケアが、将来のアレルギーや喘息の発症リスクを低減できるということもわかっています。
つまり、小さな頃の保湿習慣は、子どもの未来の体質づくりにも影響するということ。
我が子の肌を守るために、季節を問わず、こまめな保湿ケアをぜひ意識してみてください。
Q.日中、汗をかいたときは、どのようにケアをするのが理想ですか。
汗をかいたときは、可能であればシャワーでこまめに洗い流すのが理想です。
ただ、毎回シャワーを浴びるのは難しいことも多いですよね。そんな時は、汗をかいた部分をタオルでやさしく拭き取ったり、汗で濡れた下着を着替えたりするだけでも十分です。
タオルで拭くときは、ゴシゴシ擦らず、トントンと軽く押さえるように拭いてあげてください。
外出先では、アルコールフリーのおしぼりや濡れた布巾を使ってやさしく拭くのもおすすめです。
あせもや肌荒れを防止するためにも、長時間、汗を肌に残さないように心がけましょう。

Q.赤ちゃんのあせも対策について、教えてください。
あせもは、汗が肌に残って汗腺が詰まり、汗の出口が塞がれてしまうことで赤く腫れて、かゆみやチクチクとした違和感が生まれます。
赤ちゃんは大人よりも汗腺の密度が高く、体温調節も未熟なため、夏に限らずあせもができやすいです。
予防のポイントは、汗をかいたらできるだけ早く肌を清潔にすること。
また、吸湿性・通気性のよい素材(綿100%やメッシュ素材など)の下着を選ぶのも効果的だと思います。
とにかく汗をかきにくい環境を整えることが、一番の予防です。
暑い日はエアコンを入れて、涼しい環境で過ごせるよう、工夫してみてください。
先ほどもお話ししましたが、汗をかいたらシャワーで流す、下着などを着替える、汗を拭き取るなど対策をしつつ、肌の保湿もしっかり行いましょう。
肌の乾燥が続くと皮膚のバリア機能が低下し、あせもができやすい肌になってしまいます。
「保湿をしてから→ふたをする!」という考え方
Q効果的な保湿方法などはありますか。
保湿剤は、ローションタイプでもクリームタイプでも、保湿効果に大きな差はありません。
子どもの好みに合わせて使ったり、「夏はさっぱりとした使い心地のローションにする」など、使い分けてみてください。
特に乾燥しやすい手首・足首・肘の内側・首まわりなどは、保湿剤を塗ったあとにワセリンを重ねるのがおすすめです。
ワセリンは「保湿」というよりも、水分を閉じ込める、保護やバリアの役割。汗を拭いたときの摩擦から肌を守ってくれたり、汗をはじいておむつかぶれの予防にもつながります。
全身をクリームやワセリンでベタベタにしなくても、さっとローションで保湿したあとに、乾燥しやすい部分だけワセリンで蓋をするようなイメージで、ぜひ続けてみてください。

Q.保湿のベストタイミングは、やはりお風呂上がりですか。
そうですね。入浴後はできれば毎日、保湿をしたいです。
保湿は「お風呂を出てから10分以内」がベスト。お風呂やシャワーのあと、肌の水分量がまだ保たれているのが「10分以内」といわれています。それ以降は急速に乾燥が進んでいきます。
お風呂から出たらなるべく早く、保湿しましょう。
とはいえ、お風呂上がりに汗が引くまで時間がかかる、という、汗っかきの子もいると思います。
まずは全身に保湿剤を塗って水分を補い、その後、汗が引いてからワセリンで肌を保護をする、という手順でも良いと思います。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の見分け方
Q.0才児によくみられる、乳児湿疹について、教えてください。
月齢の低い赤ちゃんの肌トラブルとしてよく知られているのが「乳児湿疹」です。

生後3か月くらいまでは皮脂の分泌が盛んなため、額やほっぺた、頭などに「脂漏性湿疹」と呼ばれる湿疹が出やすくなります。これが一般的に「乳児湿疹」と呼ばれるもので、肌を清潔に保ち、しっかり保湿していれば、月齢を重ねるにつれて自然に治るケースが多いです。
Q.乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の見分け方はありますか?
「乳児湿疹」と「アトピー性皮膚炎」は症状がよく似ていて、はっきりとした違いを見極めるのは、看護師の私でもなかなか難しいです。
判断基準のひとつとしてですが、生後3ヶ月頃までの湿疹は、乳児湿疹である可能性が比較的高いです。
我が子の場合は、生後3ヶ月頃までは頬にプツプツと乳児湿疹が出始め、経過観察していましたが、その後、足首や手首、ひじやひざの内側など、関節まわりにジュクジュクしたり、かさついた湿疹が出始めました。

ここで「もしかしてアトピーかも」と思い、受診しました。
「湿疹の出方が変わってきた、範囲が広がったと感じる」「保湿を続けてもなかなか改善しない、むしろ悪化する」ような場合には、注意が必要です。
とはいえ、乳児湿疹とアトピーの区別はとても難しいです。
また、アトピーは、かなりひどくなってしまうと強いお薬を使用しないといけなかったり、入院で治療というパターンもでてくるので、「ちょっとおかしいな」「長引くな」と思ったら、早めに小児科を受診しましょう。
Q.肌トラブルが起きた場合、小児科と皮膚科、どちらを受診するのが良いでしょうか。
まずは、かかりつけの小児科で相談してみるとよいでしょう。
最近は、アレルギー疾患に強い小児科も多く、なかにはアレルギー専門医がいる場合もあります。
通いやすい距離で、信頼できるクリニックを探しておくと安心です。
アトピー性皮膚炎は、早期からのケアと、適切なタイミングでの受診がとても大切です。
保湿を続けてもなかなかよくならない場合、かゆみが強くて眠れない、ジュクジュクしてきたような場合は、迷わず医師に相談してください。
必要に応じて皮膚科や専門医を紹介してもらえるので、まずはかかりつけの小児科に頼ってみてくださいね。
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肌を守ることは、子どもの未来を守ること。
保湿やスキンケアは、毎日の小さな習慣の積み重ねですが、将来のアレルギーリスクを下げるなど、子どもの体質づくりにもつながる大切なケアです。
次回は、日焼けや虫刺されなど、夏ならではの肌トラブルについて詳しくお聞きしていきます。お楽しみに!
ライター 後藤麻衣子