2025.08.13

0才から考える、きれいな歯並びの育て方 vol.4「食習慣を整えよう」

きれいな歯並びを育てるための、食事環境や姿勢についてお聞きしてきたこのシリーズも最終回。

vol.4ではいよいよ、実際に「何をどう食べるか」という、食べ方についてお聞きしていきます。

手づかみ食べの役割、スプーンやフォークへの以降期など、食習慣で気をつけたいポイントと、子どもの発達段階に合わせた無理のない「食べる力」の育て方について、歯並び育児の専門家である山上あかりさんにお聞きしました。

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山上あかり

山上あかりさん

《教えてくれた人》

歯科衛生士
「一般社団法人 歯並び育児®協会」マスター講師。2015年、愛知学院大学 歯科衛生学科卒業。産休・育休を挟みつつ歯科医院に8年間勤務。現在は「矯正のいらない、自然できれいな歯並びを育てる子育て」を広めるため、「歯並び育児®講座」の講師として全国で活動中。5歳までの歯並びに悩む親子へのサポートにも力を入れている。子育てがもっと楽しくなるように、日々情報を発信。 一般社団法人 歯並び育児®協会

「噛んで飲み込む力」を育てる、食のはじめの一歩

—vol.3までは、食事の姿勢やベビーチェアなど、環境づくりについて詳しく伺ってきました。次は「食べるもの」についてもお聞きしたいです。

理想の食事環境が整ったら、次に大切なのは「お口の発達に合った食事を選べているかどうか」に目を向けましょう。

どんなに良い姿勢で食べられるようになっていても、食材の選び方がその子の発達に合っていなければ、噛む力や舌の動かし方、食べ方そのものに影響が出てしまうことがあります。
たとえば、食材が柔らかすぎると、噛む力や舌を動かす力が育ちにくくなりますし、逆に硬すぎると口の中でうまく処理できずに吐き出してしまったり、丸飲みしてしまうこともあります。

お口の発達を見ながら、大きなものを使ってBLW(ベビーレッドウィーニング)や手づかみ食べを取り入れることもありますが、食べ方によってはママが手を添えてサポートしたり、あえて小さな食材を使って食べ方の練習をすることもあります。

このように、子どもによって発達のスピードはそれぞれ違います。
だからこそ、「◯か月だからこの食材」といった月齢を基準にするのではなく、その子の発達に合った食事形態を見極めていくことが、将来の歯並びの土台を育てるうえでもとても大切になってきます。

 

—スプーンやフォークなど、道具を使い始める時期についても教えてください。

これも、ママたちからとてもよく聞かれる質問のひとつです。
まず大前提として、スプーンやフォーク、お箸などの道具を使って食事ができるようになるためには、手を自由に、思い通りに動かせることが必要になります。そのための準備として大切なのが、「手づかみ食べ」の時期をしっかり確保してあげることです。

手づかみ食べをすることで、指先の発達が促され、結果的にお口や舌の繊細な動き、そして歯並びにも良い影響を与えることにつながっていきます。

とはいえ、手つかみ食べは「汚れるのがイヤ」「片付けが大変…」と思うこともありますよね。
無理に毎回手づかみ食べを頑張ろうとしなくても大丈夫です。
心に余裕があるときだけでもチャレンジしてみる、という気持ちで十分だと思います。

ちなみに、すくすくチェアはお掃除のしやすさも考えられた設計なので、「手づかみ食べってちょっとハードルが高そう…」と感じている方にも取り入れやすいと思いますよ。

 

—「手づかみ食べ」がやはり大切なのですね。手つかみ食べから、スプーンやフォークへの切り替え時期については、どう考えたらよいでしょうか?

スプーンやフォークは、「今から使わせよう!」ときっちり切り替えるというよりも、手づかみ食べと並行して、最初はお子さまの手の届くところに置いておくことから始めてみてください。

子どもは、ママやパパのすることをよく見ていて、まねっこが大好きです。
ご両親が食具を使ってごはんを食べている姿を見ることで、自然と「やってみたい!」と興味を持ち、手を伸ばしてくることもあると思います。

もちろん、最初からうまく使えるわけではありませんし、手づかみのほうが食べやすいと感じて、途中でスプーンやフォークを使わなくなることもあります。
でも、子どもは自分の出せる力を精いっぱい使って、少しずつ動き方を身につけていくので、焦らずに温かく見守ってあげてくださいね。

また、お箸についてもよく質問をいただくのですが、私たち歯並び育児協会では、リングやバネのついた補助箸はあまりおすすめしていません。子ども自身の力ではまだ難しい動きを無理にさせてしまうと、自然な体の発達が妨げられてしまい、姿勢のゆがみや不自然な体の使い方につながり、それが歯並びにも影響してしまうことがあるからです。
ちなみに、歩行器や手押し車なども同じ理由で、使い方には少し注意が必要だと考えています。

スプーンやフォークに慣れることよりも、まずは「しっかり噛んで飲み込む力」を育てることが、食べる力の土台づくりとしてとても大切だと感じています。

 

「ながら食べ」が当たり前になる前に

—そのほか、子どもの食習慣について気をつけた方がよいことはありますか?

ひとつ気をつけたいのが、「ながら食べ」です。
たとえば、立ちながら・歩きながら・テレビを見ながら、あるいはチャイルドシートやベビーカーに乗ったまま食べるような場面では注意が必要です。

少し想像してみてください。
歩きながら何かを食べると、周囲からの視覚的な刺激も多くなり、さらに体を動かしていることで脳の処理能力も使われてしまいます。

どうしても噛む回数が減ってしまったり、早食いになってしまったりして、しっかり口を動かす機会が奪われてしまいます。
その結果、食事に集中しづらくなってしまうんです。集中できないだけでなく、消化器官に負担がかかったり、栄養の吸収がうまくいかなくなる可能性も出てきてしまいます。

とはいえ、お出かけ中にお腹が空いてしまったり、ご機嫌を取る必要がある場面もあると思います。そうしたときにまで「絶対に食べさせてはいけない!」ということではありません。

大切なのは、「ながら食べが当たり前」の習慣にならないようにすること。
日常の中での頻度をできるだけ減らす、という意識を持っておくだけでも、子どもの食習慣は大きく変わっていきます。

また、「ストロー」や「スパウト」の使いすぎにも注意が必要です。
近年はその影響について知られるようになってきましたが、あらためてお伝えしたいのが、飲み物の飲み方は舌の筋肉を育てる大切なカギだということです。

ストロー飲みばかりに頼っていると、舌の正しい使い方が学びにくくなってしまいます。
ですので、意識的に「コップ飲み」の練習を取り入れていくことがとても大切です。

とはいえ、ストローを完全に使わないのは難しい場面もありますよね。そんなときは、ストローが口の奥まで入りすぎないように、あらかじめストローを短く切っておく工夫をしてみてください。
また、ストローは「お出かけのときだけ使う」など、使う場面を限定するのもよい方法です。

さらにおすすめなのが、お風呂場でコップ飲みの練習をすること。お風呂のついでであれば、水がこぼれても気にならず、親子ともにストレスが少なく取り組めます。

コップに水を入れて遊び感覚で試すうちに、少しずつ上手に飲めるようになっていきますよ。

***

 

お子さんの「食べる力」を育てることは、将来のきれいな歯並びの土台をつくることにもつながります。
手つかみ食べ、道具の使い方など、コツについてお聞きしてきましたが、「完璧を目指す」ことではなく、「日々の習慣として意識する」だけで、きっとその習慣がきれいな歯並びに繋がっていきます。
今日の食卓が、きっとその第一歩になるはず。

少しずつ、家族のペースで進めてみてくださいね。

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yamatoya magazine

わたしたちは、子ども家具メーカー「yamatoya」です。

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