赤ちゃんが生まれて始まる、授乳と育児の日々。
その中で多くのママやパパが、「これで合ってるのかな?」「どうすればもっと楽にできるかな?」と悩みながら、試行錯誤を重ねていると思います。
助産師の高須かおりさんに、授乳についてのお悩み相談に乗ってもらうシリーズも最終回。夜間授乳の工夫や寝室環境、産後の体のケアについてもお聞きしていきます。
2025.10.08
助産師さんに訊く!授乳のお悩み相談室vol.3「子育て環境」編

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高須 かおりさん
《教えてくれた人》
寝室環境、夜の授乳環境を整える
ーvol.2では「添い寝」や「添い乳」ができる環境の良さなどについてもお聞きしました。夜は暗い部屋の方がいい、というお話もありましたが…。
夜の授乳は、暗めの部屋だと、そのままスーッと眠ってくれることが多いと思います。反対に、光をパッと浴びると、目が覚めるスイッチが入ってしまうことがあります。
だから、夜間の授乳やおむつ替えなども、できるだけまぶしい光を避けることをおすすめしています。
とはいえ、「真っ暗じゃないとダメ」というわけではありません。ほんのり灯るやわらかい明かりでも十分です。
赤ちゃんの眠りを守るには、「環境のちょっとした工夫」がとても効果的です。
光の加減も、そのひとつ。「夜、なかなか寝てくれない」という方は、寝室の照明が明るすぎないか、見直してみてくださいね。
過去の記事「赤ちゃんの寝る力を育む」シリーズでも、寝室の環境や寝かしつけの考え方について、詳しくお話しています。
産後の体を休めるためにも、ぜひ参考にしていただきたいです。
ー寝室の環境づくりにもかかわってきますが、産後はとにかくママの体を休めることが本当に大事ですよね。
はい。
出産を終えたばかりのママの体は、想像以上にダメージを受けています。
見た目は元気そうに見えても、実は体の奥では、さまざまな器官が一生懸命回復しようとしている時期です。
出産後、子宮は少しずつ小さくなっていきますが、それでもしばらくは重さのある状態です。
その子宮を支えているのが「骨盤底筋」と呼ばれる筋肉。お産で緩んでしまっているこの筋肉に、まだ重たい子宮が乗っている状態だと、さらに負担がかかってしまいます。
だから私は、できれば産後の1〜2ヶ月は、階段の上り下りも避けてほしいと思っています。
横になって過ごす時間を少しでも長く確保することで、骨盤や体の深い部分にかかる負担を軽くすることができます。
もし骨盤周囲がうまく回復できないと、腰痛が出てきたり、抱っこや授乳の姿勢もつらくなったりすることがあります。
その先の育児を「自分らしく、心地よく」続けていくためにも、まずは「とにかく休む」ことを最優先にしてほしいです。
赤ちゃんのお世話に追われる日々の中で、精一杯になってしまう気持ちもわかりますが、赤ちゃんの命を大事にするのと同じくらい、「自分の体を回復させる時間をとること」もとても大切。
それは、これから長く続く育児を支える、とても大事な期間なのです。
地域の助産師さんに相談してみよう
ーyamatoyaで行ったアンケートには、「退院後、授乳について誰に相談していいかわからない」という声もありました。
もちろん、出産をされた病院、クリニックでも相談はできます。
でも、それだけではなく、地域ごとに、“地域の助産師”たちが、それぞれ活動しています。
助産師がいる助産院や、母乳相談を受けられる施設、出張専門の助産師などもあります。
ただ、残念ながら「そういう場所や人があること自体、知られていない」ことも多くあります。
たとえば、ご自分の住んでいる市町村には助産院がない、助産師がいない場合でも、隣の市や町に助産師がいることもあります。
相談窓口の情報は、市の保健センターや母子手帳と一緒にもらえる資料に載っていることもあります。
育児はひとりで抱え込まず、話せる場所・頼れる人を知っておくことがとても大切です。
「ちょっと話を聞いてもらいたいな」と思ったら、どうか遠慮せずに声をかけてほしいです。
ー確かに、「助産師さん=病院やクリニックで働いている人」と思っているママも、多いかもしれません。
確かに、出産のときに助産師と出会うのは、たいてい病院や産院ですよね。
でも実は、院外で活動している助産師さんもたくさんいます。
最近では、「産後ケア」などの取り組みを通じて、地域で育児や母乳相談に応じる助産師の存在が少しずつ知られるようになってきました。
それでもまだ、「そんな場所があるなんて知らなかった!」「出張で来てくれる助産師さんがいるなんて知らなかった!」と驚かれることも多いのが現状です。
まずは、「地域にも助産師さんがいる」と知ってもらえることが大切です。
不安なとき、気になるとき、「こんなことで相談してもいいのかな?」と思わずに、
どうぞ気軽に、地域の助産師さんにも頼ってみてください。
私たちはいつも、ママと赤ちゃんのそばで、ママの望む育児をサポートしたいと思っています。
ーそうした地域の助産師さんは、どうやって探せばいいんでしょうか?
まず、インターネットで「○○市 助産師」などと検索してみると、その地域で活動している助産師さんの情報が見つかることがあります。
また、各都道府県には「助産師会」という団体があり、そこから地域ごとの活動助産師が紹介されていることもあります。たとえば愛知県なら「愛知県助産師会」で検索してみてください。
さらに、日本全体をつなぐ「日本助産師会」という大きな団体から、各地の助産師会へアクセスすることも可能です。
もしネットでの検索が難しいと感じるときは、お住まいの市区町村の保健センターに相談してみるのもひとつの方法です。
母子手帳を受け取った窓口で「こんなことで困っていて…」と伝えると、地域で活動している助産師さんや、必要な支援につながるよう紹介してもらえることがあります。
自分自身が心地よくいられる方法を、見つけることから
ー今、まさに育児に奮闘しているママやパパへ伝えたいことはありますか。
赤ちゃんが生まれると、昼も夜もなく、24時間体制でお世話する日々が始まります。
「赤ちゃんにとって、一番いい方法を探りたい」「赤ちゃんが快適に眠れる環境を整えたい」。そう思う気持ちは、どのママ・パパにも自然にあるものです。
でも、それと同じくらい大切にしてほしいのが、「自分たちが楽でいられること」「生活しやすいこと」そして、「育児を楽しむこと」です。
赤ちゃんが目の前にいると、どうしても「赤ちゃんのために、赤ちゃんのために」と、自分のことを忘れてしまいがちです。
ママ自身も、周りの人たちも、自然とそんなモードになってしまう。でも本当は、「いかに自分が心地よく過ごせるか」が、とても大切なんです。
授乳の姿勢や寝る場所、生活の動線、ちょっとした休憩の取り方などを、ぜひ妊娠中から、ご家族と一緒に考えてほしい。
自分の体や心に少し余裕があると、さらに赤ちゃんにもやさしく接することができます。
だからこそ、赤ちゃんと一緒に過ごすために、「自分にとっての快適さ」をもっと考えてほしいと、いつも思っています。
ーそうですよね。特に初めての育児ともなると、どうしても気が張ってしまいがち。
赤ちゃんは、“みんなの”赤ちゃんです。
おっぱいをあげることだけは、ママにしかできないかもしれない。
でも、それ以外のことは、誰かが引き受けてくれるだけで、ママは安心して赤ちゃんと向き合えるようになります。
最近では、パパも育児休暇を取る方が増えてきました。
パパが「赤ちゃんのお世話をしたい」それも一つの育児のかたち。ママが快適に過ごせるように家事や上の子のお世話をするのも育児のかたち。
私は何よりもママ自身が無理なく、安心して子育てできることが大事だと思っています。
今日は授乳の話でしたが、安心できる環境があるだけで、母乳の出がよくなることもあります。
逆に、強いストレスがあると、体も心も緊張してしまい、母乳が出にくくなることもあります。
だから、「がんばる」ことより、「安心して過ごせる」ことを大事にしてほしい。
自分を後回しにしないで、どうか大切にしてくださいね。
***
授乳や育児のスタートには、たくさんの「わからないこと」があります。
でもそのすべてを、ひとりで抱え込む必要はありません。
大切なのは、「赤ちゃんにとって、なにが一番いいか?」だけでなく、「自分にとって、どうすれば心地よく育児ができるか?」という視点も、ちゃんと持っておくこと。
頼れる人を頼って、使えるものを使って、自分らしいペースで子育てしていけますように。
高須さん、素敵な言葉をありがとうございました。
ライター 後藤麻衣子
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