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「たのしいね」をシェアする、離乳食期の関わりかた

2021.08.01

生後5〜6ヶ月頃になると、いよいよ離乳食がはじまります。

今回は、離乳食期の食事で大切にしたい考え方と、子どもとの関わり方のコツについて、ベビーチェアの設計に携わっている設計士で、子どもの食事環境にも詳しい、yamatoya子育て研究員の市川さんに聞いてみました。

市川さん

お話を聞いたひと
yamatoya 設計士 兼 子育て研究員 市川 和明さん

インテリアデザイン学科を卒業後、2011年2月にyamatoyaに入社。家具の設計をメインに、工場の選定や量産管理なども担当する。子育て世代に寄り添った家具設計を目指すべく、2016年からはyamatoyaの「子育て研究員」として、子育て世代のライフデザインを探究。一児の父。

 

離乳期は食事を好きになる準備期間

おっぱいやミルクを「吸う」ことしかできなかった赤ちゃんも、どんどん成長し、「たべる」ことができる体に成長していきます。

「たべる」ということは、人間にとって生命を維持するためにとても大切な行為である一方で、誰かと食卓を共にすることで互いに安心感を得ながら信頼関係を築いたり、「おいしいね!」という気持ちもシェアして食事の時間自体を楽しんだりと、人間社会を生きていくうえで基礎となるコミュニケーション力を培う場としてもとても重要。それは大人でも、食べることをはじめたばかりの赤ちゃんでも一緒です。

「たべる」ということは、からだの成長はもちろん、こころの成長のために欠かせない行為のひとつなのです。離乳期は、いずれ大人と同じものが食べられるようになるための、大切な準備期間。食材の形状や栄養バランスに気をつけるのと同じように、食事のときのコミュニケーションも大切です。「ごはん、きらい!」というマイナスのイメージではなく、食卓が好きになるようなプラスのコミュニケーションをするには、どのようなことに気をつければいいでしょうか。

おいしそうに食べる姿は、見ているこちらも幸せになりますね。

 

子どもの狭い視野に、親の姿を

食事のときに心がけたいことのひとつは、アイコンタクトです。

ママやパパが自分のことを見てくれている、気にかけてくれている、そしてニコニコ笑ってくれていると、子どもは安心して食事を進めることができます。

子どもの視力はまだ未熟で、4〜6ヶ月ころで0.03から0.08くらい。1歳でもまだ0.1から0.2程度しかないと言われています。大人であれば眼鏡やコンタクトレンズがないと生活ができないレベルでしか、世の中が見えていないのです。

たとえば、遠くから「これ食べる〜?」とバナナを見せたところで、視力が未熟な子どもにとっては何かわからず、親の意図が伝わっていないことも多いので、なるべく子どもの顔の近くで食べ物を見せてあげたり、目線を合わせて目の前で話しかけるように心がけましょう。

また、まだ視野も狭いです。ママやパパが、子どもの真横や後ろあたりにいると視界に入らず、子どもは不安に感じてしまいます。食べさせるときなどは真横からアシストすることも多いかもしれませんが、できれば正面に座り、狭い視野の子どもでもすぐに大人がいることを認識できるよう、子どもの顔の近くでアイコンタクトや声かけをしながら進めましょう。

ちょっとしたことですが、それだけで子どもは安心して、もっと食事を楽しめるかもしれません。

 

汚したって、残したって大丈夫!

離乳後期の9ヶ月から1歳に近づいてくると、歯ぐきで上手に食べものが潰せるようになります。食べものを自らつかんで口に運ぶ「手つかみ食べ」を少しずつ始めたい時期ですね。

手づかみ食べの機会を積極的に取り入れることで、離乳後期にスプーンやフォークを上手に持てるようになったり、食への関心や集中力が増したりと、子どもの食生活の成長に嬉しいことがたくさん期待できます。

ただ、まだ食べものとおもちゃの区別がつかない月齢でもあるので、目の前の食べ物で遊んでしまいがち。好き嫌いも出てくる頃なので、同じものばかり食べて、嫌いなものを残してしまう…ということも増えてくるでしょう。でも、多少は目を瞑りつつ、「やりたいように食べる」ことを優先してあげられると、子どもものびのびと食事を楽しむことができます。

ゴールは「汚さずきれいに食べる」ことや、「全部残さずきちんと食べる」ことばかりではありません。忘れず大切にしたいのは、ママやパパなど家族と「一緒に楽しく食べる」こと。テーブルや床が汚れてしまっても、お残ししても、子どもが楽しい食事を経験できれば100点満点です!

 

ママやパパが楽しいと、子もきっと楽しい

でも、一生懸命作った離乳食が無駄になってしまったり、食後に大掃除をしてばかりでは、ママやパパの気力と体力が持ちません。食事用スタイを活用する、新聞紙やゴミ袋を敷いて食べる、など、少しでも後片付けが楽にできるように工夫や準備をして、「おいしいね」と声をかけながら見守る時間を少しでも取れたら理想ですね。

ポジティブな声かけは、子どもの食事を豊かなものにします。本人はまだ言葉は話せないけれど、「いただきます」「おいしいね」「たくさん食べたね」「ごちそうさま」と、ママがニコニコして話しかけてくれると嬉しいはず。子どもの顔の近くで、スキンシップをしながら、目を見て話しかけてあげる習慣をつけて、「ごはんって、たのしい!」と思えるような環境を、ぜひつくってあげてください。

なかなか思い通りにいかないことが多い離乳食期。子どもの心配ばかりになりがちですが、まずは親自身が気楽に向き合えることを大切にしてください。目の前に楽しそうなママやパパの顔があるだけで、赤ちゃんも安心し、「ここは楽しい場所なんだ!」と、食卓が好きな子に育ってくれるかもしれません。

 

*ベビーチェア専用テーブルについては、こちらの記事でもご紹介しています。

 

 

ライター 後藤麻衣子

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Profile

yamatoya 設計士 兼 子育て研究員

市川 和明

インテリアデザイン学科を卒業後、2011年2月にyamatoyaに入社。家具の設計をメインに、工場の選定や量産管理なども担当する。子育て世代に寄り添った家具設計を目指すべく、2016年からはyamatoyaの「子育て研究員」として、子育て世代のライフデザインを探究。一児の父。

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