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家族の家具のこと、もっと話そう「すくすくローチェア」編

2021.10.20

yamatoyaのアイテムについて深掘りしていく、「家族の家具のこと、もっと話そう」シリーズの第一弾。

今回は、累計78万台をこえるロングセラー「すくすくチェア」のシリーズから、2019年に登場した「すくすくローチェア」についてです。さらに今年10月、改良を重ねてパワーアップした「すくすくローチェアⅡ」がデビューしたばかり。

今回は、有限会社スタジオポイントの澤田剛秀さんと、yamatoyaの設計士、市川和明さんに、ローチェアの誕生秘話をお聞きしました。

《お話を聞いたひと》
プロダクトデザイナー 澤田剛秀さん

有限会社スタジオポイント代表。名古屋市立大卒、愛知県立芸大院卒。2005年にデザイン事務所を設立。グッドデザイン賞、Residential Lighting Awards、その他デザインコンペなどの受賞歴多数。商品開発はもちろん、商品やサービスの開発支援やブランディングなども得意。2015年から、yamatoyaに製品開発アドバイザー・ブランディングコンサルタントとして参画。二児の父。

市川さん

《お話を聞いたひと》
yamatoya 設計士 兼 子育て研究員  市川 和明さん

インテリアデザイン学科を卒業後、2011年2月にyamatoyaに入社。家具の設計をメインに、工場の選定や量産管理なども担当する。子育て世代に寄り添った家具設計を目指すべく、2016年からはyamatoyaの「子育て研究員」として、子育て世代のライフデザインを探究。一児の父。

 

ローチェアの「最適解」をさぐる

市川
yamatoyaには、ロングセラーのベビーチェア「すくすくチェア」があります。これは、その「すくすく」シリーズのローチェアバージョンとして、2019年に誕生しました。大きな足置き板があるので、ローチェアでもしっかりと足が届きます。座板の奥行きは前後に4段階、足置き板の高さは上下に3段階に調整できるので、成長に合わせて、正しい姿勢を保つことができるローチェアです。
さらに今年10月に、改良を重ねてリニューアルした「すくすくローチェアⅡ」がデビューしました!

澤田
そもそも、ローチェアの開発話はアドバンスで出たんだよね。

ー「アドバンス」って…?

澤田
6年ほど前から、開発チームを中心に1か月に2回集まって、ざっくり言うと“未来の話”をしているんですが、それを社内で「アドバンス」と呼んでいます。
今までのyamatoyaさんの商品開発は、お客様や市場のニーズに対するリアクションがきっかけになることが多かったんですが、そればかりではなく、yamatoyaとしてのメッセージや、子育てシーンにおける課題を見つけながら、ゼロからコンセプトを立ててものづくりを進めていく、そういう文化が社内に育っていったらいいよね、というところから始まりました。
実際にアドバンスで出たアイデアの種がこうして商品につながったりもしています。

市川
そう、そのときに「ローチェアの最適解ってないよね」っていう話になって…。

澤田
そうそう。それまで市場を占めていたローチェアは、ただ「低い」という機能だけの、安価なものが多いイメージでした。ハイチェアのように足がぴったりつくものや、子どものからだの寸法に対してアプローチしているものが少ないのでは?という仮説を立てて、スタートしました。

 

すくすくチェアとの“きょうだい感”

ー開発の過程で、こだわったことや大変だったことを教えてください。

市川
細かいことなんですが、たとえば木目の継ぎ目をどうするのか?という話。
こちらとしては、木目が美しく流れるようにしたいけれど、作業工程など現場の都合を聞いていくと、ちょっと不自然に目立つ位置に継ぎ目がきてしまうことになって…。工場の要望もできる限り聞きつつ、なるべく目立たなく自然な位置にできるように、何度も調整しました。

澤田
デザインに関しては「足がピッタリつく」「姿勢良く座れる」という条件に加えて、安全性もしっかりクリアできるよう、ひとつずつ進めていきいました。背板と座板の角度は90度に設定して、座面から足を90度におろしたときにしっかり足の裏全体がつくよう、足置き板を広くしました。
もうひとつ、「すくすくチェア」とのシリーズ感をどう出すか?という点も考えました。
現状の「すくすくチェア」の特長でもある波型の座板などのエッセンスを取り入れたり、テーブルなどの共用パーツを活用することで、“きょうだい”のような存在感が出せたらいいな、と。

市川
確かに、“きょうだい”の感じありますね!
僕は当初、澤田さんの提案を見て「座板の高さを変えなくてもいい」というところに驚きました。「ハイチェアのように座板や足置きを調節できるものをつくろう」と始まった商品開発だったので、もちろん座板も調整するものだと…。

澤田
ローチェアは、ハイチェアのように「大きくなっても使えます」というものじゃないんですよね。ローチェアの対象年齢を安易に広げれば広げるほど、どこかで矛盾が出てきてしまう。それであればメインのターゲット年齢層をしっかり決めて、その年齢層にとって過不足ないものをシンプルにつくった方がいいと思ったんです。
すくすくローチェアは、「足置き板の高さ」と「座板の奥行き」だけを変えるだけで、0才から5才までの子の体型に対応できるようになっています。パラメーターはできるだけ少なくして、パーツも形も極力シンプルにしていくことで、使い手にとっても優しいものになると思います。

市川
「座板の奥行きを変えるだけで、高さは変えなくてもいいんだ…!」と、目から鱗でした。でも実際にデザインを見てみると、とてもシンプルでわかりやすかったです。

澤田
ここが、今の「すくすくローチェア」の最適解かな、と思っています。ロングセラーのハイチェア「すくすくチェア」のシリーズが、改善を重ねながら20年以上も続いてきたように、ものづくりはアップデートしていく必要があると思います。僕自身、外部デザイナーとして、というよりもyamatoyaのメンバーのひとりとして関わっているつもり。これからも考え続けていけたらいいなと思っています。

 

子どものように、成長していくイス

ーリニューアルした「すくすくローチェアⅡ」がデビューしたばかりですが、どんなところが変わったのか、教えてください。

澤田
足置き板の上に乗って強く踏み込んでもチェアに負荷がかかりにくいように、足置き板にサポートパーツを追加しました。このパーツがついたことで、安定性が向上しました。失くしにくいよう、座板の裏につけておけるところもポイントです。

市川
もうひとつ、テーブルが標準装備になりました。
テーブルはもともとオプションでしたが、実はテーブル購入率は約80%と想像よりも高かったので…。

ーお客様の要望にお応えした、というかたちなんですね。

市川
はい。テーブルがついたぶん、本体価格は上がりましたが、オプションでつけるよりも少しお値打ちな価格にできました。テーブルが必要なくなったら外して、長く使ってもらえたら嬉しいです。

ーテーブルがついている状態も、外した状態も、とてもかわいいです。

澤田
デザインをするとき、機能性や安全性はもちろん大前提ですが、「子どものイスらしさ」、フォルムのかわいらしさも、かなり意識しました。テーブルの有無にかかわらず、どちらもそれぞれチェアとして成り立つようなデザインを心がけました。

ーなるほど。たしかに、付いていたものがどんどん外れて、全体の印象が変化していくイスですよね。

澤田
そうですね。どんどん要素を引いていって、全部外れたときにも、かわいいイスであってほしいなと思ってデザインしています。ぐんぐんと成長していく子どものように、テーブルが取れて、足置き板が取れて…と、イス自体もなんだか少しずつ成長していくイメージ。
あれこれ付属していたローチェアが、最終的にはシンプルな「イス」になるというのは、子どもの成長と響くところもあるのかもしれません。
こういうことって、長々と説明するようなことではないのですが、実はすごく考えていて。感覚的、直感的に「なんかいいな」と感じてもらえたら嬉しいですね。

 

ライター 後藤麻衣子

 

商品深堀シリーズ:家族の家具のこと、もっと話そう「そいねーる」編も、合わせてどうぞ。

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yamatoya 設計士 兼 子育て研究員

市川 和明

インテリアデザイン学科を卒業後、2011年2月にyamatoyaに入社。家具の設計をメインに、工場の選定や量産管理なども担当する。子育て世代に寄り添った家具設計を目指すべく、2016年からはyamatoyaの「子育て研究員」として、子育て世代のライフデザインを探究。一児の父。

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プロダクトデザイナー

澤田剛秀

有限会社スタジオポイント代表。名古屋市立大卒、愛知県立芸大院卒。2005年にデザイン事務所を設立。グッドデザイン賞、Residential Lighting Awards、その他デザインコンペなどの受賞歴多数。商品開発はもちろん、商品やサービスの開発支援やブランディングなども得意。2015年から、yamatoyaに製品開発アドバイザー・ブランディングコンサルタントとして参画。二児の父。

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