#乳児 #幼児

リトルベビーと家族の思い、周囲の支え vol.3「心に寄り添える、優しい社会へ」

2023.04.05

みなさんは「リトルベビー」という言葉、耳にしたことがありますか。

2,500g未満で生まれた低出生体重児() のことを「リトルベビー」と呼びます。

小さく生まれた赤ちゃんとそのご家族が情報交換ができるサークルが今、全国各地で立ち上がり、リトルベビーやそのご家族をつなげ、支える活動、多くの人にリトルベビーについて知ってもらうための取り組みが広がっています。

今回は「愛知リトルベビーサークル『希望の光』」のお二人に、リトルベビーのことやサークル活動についてインタビューしました。

 

※低出生体重児…出生体重が2,500g未満の児のこと。その中でも、出生体重1,500g未満を「極低出生体重児」、1,000g未満を「超低出生体重児」と呼んでいます。このリトルベビーサークルは、出生体重が2,500g未満の児とその家族を対象としています。

教えてくれたひと
愛知リトルベビーサークル「希望の光」
代表 五島 香奈さん (写真左)

2014年12月に、25週5日742gで息子を出産。2021年9月に「愛知リトルベビーサークル 希望の光」を立ち上げる。一般社団法人体力メンテナンス協会 バランスボールインストラクターのほか、体力指導士・産後指導士の資格を持つ、産後ケアの専門家。産後ケアのエッセンスを取り入れながら、リトルベビーのお母さんたちが少しでも前向きに楽しく子育てができるように活動を広げている。

 

愛知リトルベビーサークル「希望の光」
運営スタッフ 黒柳 若葉さん (写真右)

元保育士。2017年・20年・21年生まれの、2才差3きょうだいの母。全員帝王切開で、第三子をリトルベビーで出産。NICU入院時に、ママやパパが赤ちゃんに触れることの大切さや効果を感じ、ベビーマッサージインストラクター、育児セラピストを取得して活動を展開する。

 

「一人じゃない」と感じてもらえるような居場所を

ーサークル活動について、今後チャレンジしたいことや、これからも大切にしたいことについて、教えてください。

 

五島 小さく生まれた赤ちゃんって、突然その状況になることが多いので、初めは相談する人もいなくて悩むお母さんやご家族はとても多いです。そんな中、同じ境遇の方とつながることが心の支えになることもあると思います。

そのためにも、月1回の「お話し会」は今後も継続していきたいです。お話し会はせっかくの貴重な時間なので、お母さんたちが集まってただお話をするだけではなく、エネルギーを高められたり、我が子に対してどう接するといいのか?ということを知れたり…という時間になるとさらに理想的です。私自身もそういった声かけができるようになりたいと思い、サークルを立ち上げる前に、産後指導士や体力指導士といった産後ケア関連の資格を取得しました。

自分自身、子育ての不安から抜け出すのがとても難しかったので、少しでも気持ちが前向きになる場づくりをしていきたいと思います。

 

黒柳 香奈さんからのアドバイスは本当にありがたくて、私も何度も救われ、支えていただきました。とても優しくて、こわばった心を撫でおろしてくれるような、肩の荷がおりるような言葉がけで。香奈さんや、サークルのみなさんの存在に救われてるママたちは本当に多いと思います。

 

五島 お母さんや、ご家族にかかるストレスは本当に大きいと思うので。「1人じゃないよ」って感じてもらえる場になるといいなと、日々思っています。

 

黒柳 私は出産当時、産まれたことを誰にも言えなくて。言っても心配させてしまうばかりだし…と躊躇していたんですが、このサークルには同じような経験をしている、思いを分かち合えるメンバーばかりなので、どんなことも気軽に話すことができます。私にとって、とても大切な居場所です。

たくさんの人に知ってもらうことが、大きな一歩に

ー当事者同士の交流の場をつくると同時に、ショッピングモールでのイベントのように、いろんな人に広く知ってもらう活動も、今後も展開される予定ですか。

 

五島 はい。積極的に行っていきたいと思っています。リトルベビーはみんな、出生体重も、乗り越えてきた困難も、みんなそれぞれ違います。その一人ひとりが希望の光で、決して「かわいそう」な対象ではないんですよ。でも、一見そう思ってしまう、悪気なく口に出してしまうことって、どうしてもあるんですよね。

私の息子は1歳半になるまで酸素吸入をしていたんですが、外出時に見知らぬ人に「まあ、かわいそう」と言われることがあって…。そうした何気ない一言が、日々がんばっているお母さんの心を傷つけてしまうことってあるんです。

リトルベビーみんなが一人ひとりがんばっていて、医療従事者の方々にもとてもお世話になって、お母さんやご家族の愛情をたっぷり受けて…。たくさんの人に支えてもらって今があるということを、当事者だけでなく一人でも多くの人に知っていただきたいです。

正しく知ることで、リトルベビーとその家族のことを温かく見守っていける社会になると思っています。

ー正しく知ってもらうこと、広がっていくことが、リトルベビーのお母さんやその家族を守ることにも繋がっていくんですね。

 

黒柳 たとえば「修正月齢(※)」という言葉も、自分が当事者になるまで詳しく知りませんでした。修正月齢というのは、低出生体重児の発達や成長について、実際に生まれた日ではなく出産予定日を基準にして考える月齢のことなんですが、それこそ保育士として働いていたときも、保護者の方とそのようなお話をする機会がなく、深く理解できていなかったんです。

※修正月齢…例えば、出産予定日より2か月早く生まれた赤ちゃんの場合は、生後2か月は修正月齢0か月、生後6か月は修正月齢4か月となります。

 

五島 修正月齢についてはお母さんたちの悩みのひとつで、お話し会でもよく話題に挙がります。「かわいいですね、何か月ですか?」とふと聞かれたときに、実際の月齢で答えるのか、修正月齢で答えるのか…。両方答えるという方法もありますが、リトルベビーについて知っていないと混乱させてしまったり、心配させてしまったりするのも…という思いもあります。

黒柳 保育士や幼稚園教諭として働いている人でも、「修正月齢」という言葉を正しく理解している人は割と少ない印象ですし、私もそうでした。

五島 サークルに参加してくださっているお母さんたちの中には、1歳児検診で保健師さんから発育に関して結構厳しいことを言われてしまった、と落ち込んでいる人も例外ではなくて…。そういった関係者さんにも、リトルベビーのことを知っていただけたら嬉しいです。

 

ー最後に、今後活動を続けていくにあたって、お二人の夢や展望、目標や、やりたいことなどをお聞きしてもいいですか。

 

黒柳 私は、お母さんたちが我が子に対して少しでも早く「生まれてきてくれてありがとう」と感じ、伝えられるよう、サポートしていきたいと思っています。

私はサークルに参加したことで、育児の楽しさや子どもの成長を喜ぶ気持ちに気づくことができました。もちろん心配や不安は尽きませんが、そればかりでなく「生まれてきてくれてありがとう」と思えるようになったことが、私にとっての大きな一歩でした。

そういう一歩を踏み出せる場所を提供できるように、活動を続けていきたいと思います。

 

五島 サークル活動としては、やっぱり同じ境遇の人と繋がれる場をこうして作り続けることで、少しでも心の支えになれたらいいなと思っています。

妊婦さんは妊娠初期を乗り越えて、安定期を迎えるとホッとして、「もう初期は乗り越えたから、安心して出産できる」というイメージを持つ人が多いと思うんです。実際、私もそうでした。でも、リトルベビーのママたちの中には、安定期だと思っていたのに突然出産することになった、という人がとても多いです。いきなり何ヶ月も早く出産することになるリスクは、どの妊婦さんにもあるんです。

まずはご本人やご主人、ご家族が正しい知識を知ることが大切な一歩だと思いますし、子どもに関わる人はもちろん、そうじゃない人にも、リトルベビーという存在を知ってもらいたい。まずは正しく知ることが、社会全体で子育てをしていく優しい眼差しにつながると思います。

リトルベビーについては当事者になって初めて知ることが多く、まだまだ十分に社会に理解されていない現状があります。社会から暖かい手をさしのべてもらえるような周知活動、そして今後出産を控えている女性やご家族に対しての啓発活動も、サークルとして続けていきたいと思っています。

多くの人に知ってもらえる種蒔き活動を、細く長く続けていけたら嬉しいです。

 

***

 

リトルベビーとその家族という当事者同士をつなぐ場であると共に、10人に1人は早産で生まれて家族みんなでがんばって乗り越えているということを、たくさんの人に知ってもらえるように活動を広げている、愛知リトルベビーサークル「希望の光」のみなさん。

とても貴重な、そして勇気と希望をもらえるお話をしていただき、ありがとうございました。

 

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information 

愛知リトルベビーサークル「希望の光」

Instagram:https://www.instagram.com/littlebaby_light.of.hope/

公式LINE:https://line.me/R/ti/p/@437kpwqr

メール:lbslof_kp@yahoo.co.jp

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前回の記事

リトルベビーと家族の思い、周囲の支え vol.1「愛知リトルベビーサークル 希望の光」

リトルベビーと家族の思い、周囲の支え vol.2「多くの人に知ってもらうきっかけを」

 

ライター 後藤麻衣子

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Profile

愛知リトルベビーサークル「希望の光」代表

五島 香奈

2014年12月に、25週5日742gで息子を出産。2021年9月に「愛知リトルベビーサークル 希望の光」を立ち上げる。一般社団法人体力メンテナンス協会 バランスボールインストラクターのほか、体力指導士・産後指導士の資格を持つ、産後ケアの専門家。産後ケアのエッセンスを取り入れながら、リトルベビーのお母さんたちが少しでも前向きに楽しく子育てができるように活動を広げている。

Profile

ベビーマッサージ講師

黒柳 若葉

保育士。2017年・20年・21年生まれの、2才差3きょうだいの母。全員帝王切開で、第三子をリトルベビーで出産。NICU入院時に、ママやパパが赤ちゃんに触れることの大切さや効果を感じ、ベビーマッサージインストラクター、育児セラピストを取得して活動を展開する。