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育休復帰の準備と心がまえ vol.2 「キャリアプランを考えてみよう」

2024.01.17

出産を期に産休・育休を取得し、いよいよ職場復帰。

「通う園も無事決まって、職場への書類提出も済んだからあとは出勤するだけ!」…と思っているママやパパは多いと思います。

しかし、実は育休から復帰した直後から、思うように両立できずに挫折したり壁にぶつかったり…という人も多いのが事実。最悪の場合、辞めたくないと思っているのに退職せざるを得ないパターンもあります。

前回に続き、企業・個人向けに育休復帰の支援をしている「Creasmile」代表の小里 結未さんに、育休後の職場復帰に向けての心がまえや、育休中からできる準備について教えていただくインタビュー企画の第二弾。「職場編」として、キャリアプランのお話などをお届けします。

 

教えてくれた人
Creasmile 代表(育休後アドバイザー / ベビーマッサージ講師)
小里 結未(おり・ゆみ)さん

広告会社で行政機関や法人企業などのマーケティングに携わる。地域雑誌の編集長を経て、社内売上トップクラスのエリアマネージャーに抜擢。その後1年半の産休・育休を取得して復帰。育休復帰前の自身の知識不足や企業のサポート体制の不十分さに葛藤したことをきっかけに、育休を取得したママ・パパに必要な知識や準備などのノウハウ、子どもとの深い関わり方などを学ぶ。企業向け・個人向けの育休復帰支援を行う「Creasmile」を立ち上げ、活動を展開する。一児の母。

 

職場の制度を正しく知り、復帰の準備をする

ーまずは育休後の職場復帰の心構え、「職場編」についてお聞きしていきます。小里さんの講座では、どのようなことを話されていますか。

夫婦で子育てをしている家庭のほか、シングルマザー・シングルファザーなど様々な家庭の形がありますし、ママ・パパどちらが育休を取るかは家庭それぞれですが、今回は話をわかりやすくするために、ひとつの例として「産休・育休をママが取得し復帰、パパは未取得で復帰後共働きの家庭」と仮定して、話を進めていきますね。

私が開講している育休後職場復帰講座では、まずは復帰後に活用できる「両立支援制度」についてお伝えしています。
復帰後に利用できる制度として「時短勤務」は有名ですが、そのほかにも残業を免除される制度や、子どもの看護休暇、深夜労働のある職種の場合はその制限など、国が定めているさまざまな制度があります。
産休前に、職場から説明や案内があったかもしれませんが、講座でお話をしてみると「初めて知りました」「いつまで使えるかしっかり把握していなかったです」という人がほとんど。
企業ごとに支援制度の期間が法律以上に設けられている場合などもあるので、まずは正しく知ることが大切です。

復帰にあたっての不安ごととして多いのが「仕事と育児が両立できるのか」「周囲に迷惑をかけないか」という悩みです。
子どもの体調不良で急な早退や欠勤が続いたり、残業ができず思うように仕事が進められない自分に葛藤してしまい、仕事のモチベーションが上がらない、という悩みもよく聞きます。私も復帰してすぐは同じように悩んでいました。
講座では、そうした悩みの解決策や考え方についても触れていきます。

悩みや心配ごとを事前に全てクリアにすることは難しいですが、それでも「自分の大切にしたいこと」や、「仕事や育児の“軸”」をしっかり持っておくことが大切です。
それらを見失わずに両立をしていくためにも、中長期的なキャリアプランを作ることを推奨しています。

 

ーキャリアプランは、どのように作っていくといいですか?

職場復帰に際して考えたいキャリアプランというのは、働き方が変わるタイミングで改めて「自分が大切にしたいこと」を整理するために作ります。

具体的には、自分の年齢と子どもの年齢を書いて、将来的にどんな仕事がしたいのか?どんな働き方をしたいのか?を考えながら、書き込んでいきます。

「○歳で資格を取りたい」
「○歳でプロジェクトマネージャーを任されたい」
「○歳で部長になる」

といった感じで、ざっくりとした目標で構いません。

それを意識したうえで、子どもの年齢も参照しながら、「いつまで時短で、いつからフルタイム勤務ができそうか」「これくらいから資格の勉強を始める」など、できそうなことや気づいたことを書きこんでいきます。

自分の理想のキャリアプランを書き出し、俯瞰して見ることで、「ここから○年間は子育てにウエイトを置いて時短勤務しよう」「子どもが○歳になったタイミングでこれを始めよう」と、未来を見据えた計画を立てることができます。
時短勤務を選んでいる人は「いつからフルタイムに戻すか」についても、このタイミングで一度仮決めすると良いでしょう。

このキャリアプランは、目標を達成するためだけに書くものではありません。
自分の人生を大事にするために書くものです。
もしかしたら復帰してから気持ちが変わるかもしれませんが、それならそれで構いません。

もうひとつ、キャリアプランを書くことで、「自分の人生において子育ての期間が意外と短い」ことを客観的に知るきっかけにもなります。

子どもが小さくて手のかかる毎日をがむしゃらにこなしていると、この状態がずっと続くような気がしてしまうんですよね。私も実際、そうでした。
でも実はその時期って、結構あっという間に過ぎていくんです。

「キャリアを積みたい」と思って復帰した人でも、両立に悩んで泣く泣く退職してしまう人をわたしはたくさん見てきました。
もちろん人それぞれの決断だとは思うんですが、「本当はもっと働きたかったのに諦めざるを得なかった」という状況になるのは本当に悲しいですし、とてももったいないと思うんです。

 

自分をもっと大切にするためのキャリアプラン

ーそのためにも、キャリアプランを立てるのは、とても重要なんですね。

はい。
こうして人生を俯瞰して見ることで「子育ての期間ってこんなに短いんだ」と感じたうえで、自分のライフステージごとに大切にしたいことを選び取って欲しいんです。

それは「今後のために今からキャリアを積もう、そのためにどうすればいいか?」かもしれないし、「今は子育てにウエイトを置きつつ続けて、○年後からフルタイムに戻ってがんばろう」かもしれないし、人それぞれでいいんです。

子どものことで頭がいっぱいになってしまう今だからこそ、自分のことも大事にしてほしい。
それを取り戻すためにも、職場復帰する前に今一度、自分のキャリアプランと向き合ってみて欲しいと思います。

 

ー実際に小里さんは、職場復帰してすぐはどんな気持ちで仕事と向き合っていたんですか?

私が育休から復帰したときは、まだ育休後アドバイザーを取得する前で、恥ずかしながら、本当に何も考えていませんでした。
出産前は、広告会社で地域雑誌の編集長をしたり、エリアマネージャーとしてバリバリ働いていたので、産後も「産前と変わらず、バリバリ働くぞ!」と意気込みだけは人一倍でした。
でも両方の実家も遠いし、夫は経営者で忙しいし、私も性格的に一人で抱え込むタイプなので尚更、両立は想像以上に過酷なものでした。

当時は、「育児と仕事の両立ができない。みんなはできてるのに…。今の自分は全然ダメだ」「職場の人に迷惑かけっぱなしで…」と、とにかく落ち込んで…。この状況があとどれくらい続くのか冷静に考えられないほど、負のループに入ってしまっていたんだと思います。

 

周囲への感謝と貢献の気持ちを忘れずに

ー「職場の人に迷惑や負担をかける」というのは、よく聞く悩みですよね。

急な呼び出しで早退したり、子どもの体調不良で休みが続いたりして、罪悪感を持ちながら働いている人はやはり多いです。
講座でもいつもお伝えしているんですが、大事なのは「申し訳ない」という気持ちに潰されてしまうのではなく、配慮に感謝し、貢献で応えていく気持ちを持つことです。

「申し訳ない、申し訳ない」と思い悩んでいても結局何も生まれません。
周囲の人たちもきっと、必要以上に謝ってほしいわけではないんです。
とにかく感謝をして、あとは自分ができるところで挽回すること。これに尽きます。

「育児中だから私は優遇されている」と勘違いにも注意が必要です。
育児以外にも、自分の病気や家族の介護など、目に見えなくても何かを抱えている人もきっとたくさんいますしね。

「助けてもらったぶんだけ、自分が助けに回れるときに率先して回る」。
これが一番です。
周囲に支えられている今の状況に感謝をする気持ちを、いつも忘れずにいたいですね。

このほかにも、育休後復帰講座の「職場編」では、夫婦の両立環境の把握や、それを職場に自己開示することの重要性についてもお話ししています。
職場環境を変えることは難しいですが、正しく知って利用することや、個人的なキャリアプランを立てることは、育休中にもできる効果的な「準備」だと思います。

 

***

 

働き方やライフスタイルが変化するときにこそ、キャリアプランを立ててみることで、自分のことをもっと大切にできそうですね。

vol.3は「家庭編」として、夫婦で話し合っておくといいこと、家庭でできる事前準備について、詳しくお聞きしていきます!

 

ライター 後藤麻衣子

 

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Creasmile 代表(育休後アドバイザー / ベビーマッサージ講師)

小里 結未

広告会社で行政機関や法人企業などのマーケティングに携わる。地域雑誌の編集長を経て、社内売上トップクラスのエリアマネージャーに抜擢。その後1年半の産休・育休を取得して復帰。育休復帰前の自身の知識不足や企業のサポート体制の不十分さに葛藤したことをきっかけに、育休を取得したママ・パパに必要な知識や準備などのノウハウ、子どもとの深い関わり方などを学ぶ。企業向け・個人向けの育休復帰支援を行う「Creasmile」を立ち上げ、活動を展開する。一児の母。