日焼けにあせも、虫刺され、水遊び…。
夏は、子どもの肌トラブルのきっかけがたくさん潜んでいる季節です。
先週に続き今回も、小児科(呼吸器・アレルギー科)での看護経験を持ち、現在は医療的ケア児の訪問看護に携わっているsui mamaさんに、「日焼け止めはいつから使える?」「水遊びの後の肌ケアは?」「水いぼって登園できるの?」など、夏ならではのトラブルとその対処法について、お聞きします。
《教えてくれたひと》
小児科看護師
sui mamaさん
(第3期 yamatoyaアンバサダー)
2024年12月生まれの女の子のママ。小児科看護師として約8年の経験をもち、これまでに呼吸器疾患やアレルギー疾患のある子どもたちの看護を中心に担当。皮膚トラブルや食物アレルギーへの対応、日常のスキンケア指導経験も多数。2020年より、医療的ケアが必要な子どもたちを対象とした小児訪問看護師として活動(※現在は育休中)。在宅での看護ケアやご家族のサポートに力を入れている。第3期 yamatoyaアンバサダー。
instagram: @niziiro__baby
外出時、子どもの日焼け&虫よけ対策
Q.子どもの日焼け対策について、教えてください。
赤ちゃんや子どもの肌はとてもデリケートで、紫外線の影響を受けやすい状態にあります。
日焼けをすると肌のバリア機能が弱まり、乾燥しやすくなったり、炎症を起こしやすくなったりするため、しっかりと対策してあげたいところです。
まず、生後6ヶ月までは、できるだけ直射日光を避けるようにしてください。
ベビーカーのシェード部分を活用したり、帽子や抱っこ紐での日陰をつくったり、抱っこをして親の日傘の中に入ったりと、できるだけ日差しを避ける方法が推奨されています。日差しの強い時間帯を避けてお出かけするなど、工夫して過ごしましょう。

生後6ヶ月を過ぎたら、赤ちゃんの肌にやさしい、アルコールフリーで低刺激な日焼け止めを使った対策もできます。
日焼け止めは朝一度塗れば終わりではなく、汗をかいたあとや水遊びのあとなどには塗り直すことも大切です。

もし日焼けして赤くなってしまったときは、肌を冷やしつつ、しっかりと保湿を行ってあげましょう。
日焼けは、「軽いやけど」のようなもの。肌のバリア機能が著しく低下し、乾燥しやすい状態になります。肌トラブルが進みやすくなるので、刺激を与えないよう、やさしくケアしてあげてくださいね。
Q.そのほかに、夏に気をつけたい皮膚ケアは何かありますか。
夏にもうひとつ気をつけたいのが「虫刺され」です。
たかが虫刺され…と思いがちですが、実は甘く見てはいけません。
虫に刺されたところをひどく掻き壊してしまうと、そこから細菌が入り「とびひ」になってしまったり、さらに悪化すると、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という皮膚の深い部分に炎症が広がる病気に進行することもあります。
蜂窩織炎になると、抗菌薬の内服が必要になるほか、場合によっては入院して点滴治療を行うこともあるほどです。
赤く腫れたり、熱を持ったり、触ると痛みがあったりするようなときは注意が必要です。
発症はかなり稀なので、過度に怖がる必要はありませんが、そういった可能性もあることを知っておくだけでも、対策が変わってくると思います。
とくに子どもはかゆみに「耐える」ことができず、寝ているあいだもずっと掻いてしまうこともあります。
何よりも大切なのは、虫に刺されないように「予防」すること。
虫除けスプレーや、衣類に貼るタイプの虫除けシールなどを上手に使って、外出時にはしっかりと対策してあげましょう。

もし虫刺されによる腫れや湿疹がひどくなってしまった場合は、なるべく早く皮膚科を受診し、必要に応じてステロイドなどの塗り薬を処方してもらうことで、悪化を防ぐことができます。
「虫に刺されただけだから」と放っておかず、早めの対応や観察を心がけてくださいね。
Q.夏は水遊びの機会が増えますが、気をつけるべきケアがあれば教えてください。
まずは、プールなどの水遊び後のケアです。
プールには消毒のために塩素が入っています。塩素自体の害を心配しすぎる必要はありませんが、特に多くの人が利用するプールは、塩素の刺激が強いことがあります。
プールが終わったら早めにシャワーを浴びて、できるだけ早く通常のスキンケアを行ってください。
海水浴も同様に、海水がついたまま肌が乾燥してしまうと、皮膚のバリア機能が損なわれてしまう可能性があります。
肌が弱い人は特に、海から上がるたびに真水で洗うと良いでしょう。
海水浴後はしっかり洗い流して、通常のスキンケアをしてくださいね。
夏に気をつけたい「水疱瘡(みずぼうそう)」「水いぼ」について
Q.そのほか、夏に気をつけたい皮膚トラブルについても教えてください。
夏に気をつけたい症状に、「水疱瘡(みずぼうそう)」(水痘)や「水いぼ」があります。
水疱瘡は、水ぶくれを伴う赤い発疹が全身に現れる感染症です。
頭皮や口の中、陰部にまで広がることもあり、強いかゆみを伴うことが多くあります。
発疹は出始めてから2〜3日ほどでピークを迎え、その後かさぶたになって治っていきます。
症状が強い場合には、抗ウイルス薬が処方されることもあります。
家庭では、爪を短く切って掻き壊しを防ぐことが大切です。また、入浴はぬるめのお湯でさっと汗を流す程度にし、石けんやシャンプーはしっかり泡立てて、手でやさしく洗ってあげましょう。
全ての発疹がかさぶたになるまでは登園・登校ができません。
元気そうに見えても、発疹が完全にかさぶたになるまでは外出を控えるようにしましょう。
また、まだ2回のワクチン接種を終えていない子が水疱瘡の子と接触した場合、72時間以内にワクチンを打つことで発症を防げる可能性があります。
早めに周囲に伝えてあげてくださいね。
Q.「水いぼ」についても教えてください。
水いぼは、白くて丸く光った小さなイボがぽつぽつと現れるウイルス性の皮膚感染症です。
イボの中にはウイルスが含まれており、潰してしまうとその中の白い塊(ウイルス)が周囲の皮膚に触れることで感染が広がってしまいます。
通常は痛みもかゆみもありませんが、アトピー性皮膚炎や乾燥肌など、もともとかゆみのある肌だと、つい掻き壊してしまい、どんどん広がることがあります。
登園や登校は禁止されていませんが、露出している部分に水いぼがある場合、掻きこわしを防ぐためにガーゼなどで覆ってあげましょう。
プールの水を通してうつることはありませんが、浮き輪やビート板、タオルなどの共有には注意が必要です。
プールのあとはシャワーでしっかり洗い流すようにしましょう。
家庭でのケアとしては、まずは爪をこまめに切って、掻き壊しを防ぐことが大切です。入浴は普段通りで問題ありませんが、兄弟姉妹とタオルを共有するのは避けましょう。また、こまめな保湿で肌のバリア機能を保つことも、感染の拡大予防につながります。
水いぼは1〜2年ほどで自然に治ることがほとんどですが、掻き壊して化膿した場合や、まわりに発疹が出てかゆみが強い場合などは、早めに皮膚科を受診してください。
Q.どんな場合も、「掻き壊さないこと」がとても大事なんですね。
はい。かゆみが伴うトラブルに共通して大切なのは「掻き壊さないこと」です。
子どもに「掻かないで」「我慢して」というのはなかなか難しいので、ママやパパができるのは「常に爪を短く切っておくこと」。
これも、とても大切です。
あせもや虫刺されなどの皮膚トラブルによる掻き壊しを防ぐためにも、爪を常に短く清潔にしておくことが、感染拡大防止の基本です。
保育園や小学校では外遊びや砂遊びをする機会も多く、爪の間に汚れや細菌が入りやすい環境でもあります。
日々の爪ケアとあわせて、手洗いもしっかり行うように心がけてあげましょう。
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特に夏は、汗や紫外線、虫刺されなど肌への刺激が増える季節。
だからこそ、毎日のちょっとしたケアが、トラブルを防ぐ大きな力になります。
「清潔にする」「掻かない」「保湿する」といったことを意識して、無理なく、心地よく、子どもの肌を守っていけるといいですね。
気になる症状があれば、早めにかかりつけ医に相談してみてください。
ライター 後藤麻衣子