2025.11.19

離乳食に、もっと選択肢を!-後編-「偏食&ポイポイ期の対応は?」

赤ちゃんが離乳食をなかなか食べてくれない、食べ物を投げてしまう…。
そんな場面に戸惑ったり、不安になったりするママパパは少なくありません。
ですが、実は「食べない」「投げる」といった行動の多くは、赤ちゃんにとって自然な成長のプロセスなのだそう。
前編に続いて、乳幼児食育支援協会の尾形夏実さんに、お話をお聞きしました。

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尾形夏実

尾形夏実さん

《教えてくれた人》

「乳児食育支援協会」代表 看護師
2019年に長女を出産。日本の離乳食スタイルに疑​問を抱き、イギリス発のBLWと出会い、2人の子ども​に実践。2021年に「BLWをはじめよう!(原書房)を出版、2024年に「乳児食育支援協会」を設​立。 乳児食育支援協会 https://shokuikushien.com/

離乳食を「食べない」赤ちゃんはどうする?

ー離乳食を「食べない」悩み、偏食などについては、どう考えればよいでしょうか。

多くのママパパが心配するのが「食べない」「偏食がある」という悩みです。
けれども、これは短期間で解決できるものではなく、時間と忍耐が必要なプロセスです。

大切なのは、まず「食との関係性を再構築すること」。
そのためには、無理に食べさせようとせず、少しずつ食べられるものを増やしながら、食事に対してポジティブな感覚を取り戻していくことが重要です。

「食べさせたい」というママパパの思いはとても自然で、愛ゆえの行動として無理に食べ物を口に運んでしまったりもすると思いますが、そのママやパパの気持ちが強くなりすぎると、しらずしらずのうちに子どもへの圧力や強制につながってしまうことがあります。

離乳食の時期は、栄養を完璧に摂らせることよりも、「食べ物と出会う」「少しずつ慣れていく」という経験を積むことが大切な時期です。
焦らずに子どものペースを尊重しながら食事を進めていくことで、将来「食べることが楽しい!」という前向きな関係性につながっていきます。

 

食べ物を投げる行動は、成長している証拠

ー子どもが食べ物を投げてしまう「ポイポイ期」については、どう考えればいいのでしょう。

9〜11か月頃になると、多くの赤ちゃんが食べ物を手に持って投げるようになります。
ママパパからすると「食べたくないのかな?」「遊んでいるだけ?」と不安になることもありますが、これは自然な発達の一部です。

生後6か月頃の赤ちゃんは「握る」ことはできても、自分の意思で手を「開く」ことはできません。
ところが9か月を過ぎる頃になると、手をコントロールして開けるようになり、その新しい動きを試すかのように物を落とす行動が出てきます。

さらに、落とした時に大人が「落としたね」と声をかけたり拾ったりする姿を観察することで、「自分の行動が相手の反応につながる」ことを学んでいます。
つまり、食べ物を投げる行為は「成長の証」であり、決して問題行動ではないのです。

 

ー投げる行動をやめさせようとすると、逆効果になることもあるのでしょうか。

赤ちゃんが食べ物を投げる姿に、思わず「やめさせなきゃ」と感じるママパパも少なくありません。
けれども、無理にやめさせようとすると「やりたい!」という欲求を抑え込んでしまい、かえって逆効果になることもあります。

実は、子どもはやりたいことを十分にやり切ることで満足し、その時期を早く乗り越えることが多いのです。

例えば食事中の「ポイポイ」に困ってしまう場合には、食事以外の時間に「投げる」遊びを取り入れてみましょう。
食べ物を投げたいのではなく、「手を開いて物を落とす」という動作そのものを試したい気持ちが強いからです。

積み木や布ボールなどを使い、投げたり落としたりする遊びの場を設けることで、赤ちゃんの「やりたい!」を満たしつつ、食卓を落ち着ける工夫につながります。

一見すると「困った行動」に見えても、赤ちゃんにとっては大切な成長の練習。
大人の視点と子どもの視点のギャップを理解することで、ママパパの気持ちも少し楽になるかもしれません。

 

食べることが楽しくなる、食事環境を整えよう

ー赤ちゃんが食べない時でも、家族と一緒に食卓に座らせた方がいいのでしょうか。

赤ちゃんがなかなか食べないと、つい「無理にでも食べさせなきゃ」と思ってしまうかもしれません。
ですが、食べなかったとしても「同じ食卓にいる」こと自体に大きな意味があります。

家族が食べる姿を見て、食事の雰囲気を感じ取ることは、赤ちゃんにとって大切な学びの時間。実際に口にしなくても、視覚や嗅覚を通じて食べ物に親しみ、やがて自分で食べるきっかけにつながっていきます。

特にBLWでは「最初は食べなくても、食卓に参加することから始める」ことが自然な流れとされています。
別の方法を選んでいる場合でも同じで、赤ちゃんが食卓にいるだけで「食べ物を知る」体験になるのです。

 

ー食事環境について、気をつけたいことはありますか。

離乳食を進めるうえで、食事環境づくりはとても大切です。

まず、食器やエプロンはできるだけシンプルなものを選びましょう。
キャラクターや派手な柄は、つい気を取られてしまい、食べ物に集中できないことがあるからです。

また、チェア選びも大事なポイントです。
ハイチェアでもローチェアでも、生活スタイルに合っていて、無理なく続けられるものであれば大丈夫。

座ったときに「正しい姿勢を保てるかどうか」は重要な観点です。

ローチェアは気軽に取り入れやすい一方で、成長に合わせた微調整が難しいケースがあります。赤ちゃんはまだ自分で姿勢を調整できないため、正しく座ることが難しくなってしまう場合もあるのです。
その点、ハイチェアは座面の高さや足置きの位置を調整できるモデルが多く、成長に合わせて正しい姿勢を保ちやすい利点があります。

すくすくローチェア3 ナチュラル

yamatoyaさんの「すくすくローチェア」は成長に合わせた細やかな調整が可能で、赤ちゃんが正しい姿勢を保ちやすい設計になっています。
私もベビーチェアの相談をよく受けるのですが、ローテーブル派のご家庭にも安心しておすすめしています。

 

ー最後に、離乳食に悩むママ・パパへ、メッセージをお願いします。

今はSNSなどに情報があふれていて、「どれが正しいのだろう?」と迷ってしまう方も少なくありません。
ですが、離乳食や子育てに“絶対の正解”はありません。ご家庭の価値観や赤ちゃんの個性に合った方法を選ぶことが、その子にとって一番の正解になります。

大切なのは「食事を楽しむこと」。
本やネットに書かれた方法を完璧にこなす必要はありません。
ママパパが納得できる進め方で、赤ちゃんと一緒に笑顔で食卓を囲むことこそ、最も大切なことだと思います。

どうか肩の力を少し抜いて、赤ちゃんとの食事の時間を楽しんでくださいね。

 

***

 

赤ちゃんの食事は「栄養をとること」以上に、「食べることを楽しむ」時間であってほしい。
尾形さんのお話からは、そんな大切なメッセージが伝わってきました。
一人ひとりの子どもに合ったペースで、ママパパも肩の力を抜きながら、笑顔で食卓を囲む、そんな積み重ねが、未来につながる「食とのよい関係」を育んでいくのかもしれません。

尾形さんが設立した「乳幼児食育支援協会」には、医師や助産師など、医療系国家資格を持つ「乳児食育アドバイザー」が在籍し、さらに今後は「乳児食育支援士」の育成にも力を入れていくとのこと。
信頼できる専門家にも相談しながら、ぜひ自分たちの家庭にあった方法を選んでみてくださいね。

 

ライター 後藤麻衣子

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