2026.02.18

看護師が解説!産後のイライラ「ガルガル期」はなぜ起こる?【後編】夫婦で乗り越えるには?

前編では、産後のイライラや不調が「性格」の変化ではなく、「ホルモンバランスと身体のダメージ」によるものであることを、岩井未愛さんに解説していただきました。

続く後編では、そんなデリケートな時期を夫婦でどう乗り越えていくか、具体的な「コミュニケーション術」や「解決策」に迫ります!

「察してほしい」からの脱却や、家事育児の「見える化」、そして孤独になりがちな第一子育児の乗り越え方とは? 今日から家庭で実践できる、家族みんなが笑顔で過ごすためのヒントをお届けします。

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岩井 未愛

岩井 未愛さん

《教えてくれた人》

看護師・保健師・一般社団法人体力メンテナンス協会認定 産後指導士
現役の看護師として働きながら、産後指導士としても活動中。自身の育休中、漠然とした不安を抱える中で児童館のバランスボールに出会い、身体の不調改善とともに心も前向きになる変化を体験する。その経験から資格を取得し、現在は「育児がもっと楽しくなる」知識や身体の使い方、夫婦のコミュニケーション術などを発信。「親としてだけでなく、”私”の人生も楽しむ!」をテーマに、ママたちがご機嫌な”私”でいられるためのヒントを届けている。これまでの講座実績は、名古屋市内児童館等講座、PTA講座、産後ケア講座、企業様向け健康セミナー等。一般社団法人体力メンテナンス協会認定バランスボールインストラクター。instagram: @mie.balanceball

「察して」は禁止! 夫婦の危機を乗り越えるコツ

ーアンケートでも、パートナーへのイライラ、特に「言わなくてもわかってほしい」という気持ちを持つ方も多かったです。夫婦間のコミュニケーションで気をつけることはありますか。

すれ違いを起こさないためにも、まずは「察して」を期待しないこと。
産後は環境が一変し、夫婦間、家族間でやるべきことや優先順位がひっくり返ります。

これまでいろいろなママの話を聞いてきて思うのは、特に男性の多くは、「言わないとわからない」ということ。
「言わなくてもこれくらい普通わかるでしょ!」では、全然伝わっていないこともあります。

 

ー私も身に覚えがあります…。パパにはどう伝えるのが、伝わりやすいのでしょう。

伝える時のポイントは、「なんでやってくれないの?」「どうして早く帰ってきてくれないの?」と相手を責めるのではなく、「私はこうしてほしかった」「私は子どもをずっと見ていたから、眠れてないんだ」「私は今、とても疲れているから助けてほしい」と、主語を「あなた」ではなく「私」にして伝える、「I(英語のアイ:私)メッセージ」で伝えること。
攻撃的な言葉ではなく、自分がどうだったかを素直に伝えることが大切です。

そしてもうひとつ、とにかく具体的に指示を出すことも大切です。
男性は女性と比べると、一つのことに集中するシングルタスクの傾向があります。
「ご飯作って、洗濯して、あとオムツも」と同時に言うより、一つずつお願いするか、リスト化、見える化して見せるのが効果的です。

女性はマルチタスクが得意な人が、比較的多いです。
私は悩んでるママに、「ママってすごい!」っていつも伝えているんですが、相手と自分は違うことを理解し、完璧は求めず相手のやり方も尊重することや、理由も含めて”伝えすぎなくらい伝えること”が大切なんです。

 

ーなるほど。見えるようにして伝える、というのは確かに効果がありそうです。

家事育児の「タスク表」というのが、最近はいくつもWeb上からダウンロードできますが、その中でもとりわけ先駆けで有名なのが、「AERA」から出た「共働きの家事育児100タスク表」です。

共働きの家事育児100タスク表

共働きの家事育児100タスク表(子ども小学生版)

小さな家事や育児を見える化するツールをうまく使って、これ以外に「我が家のタスク」なども追加しながら使うのがおすすめです。

 

ー確かに、こうして書いてあると何をすべきなのか、相手が何をしてくれていたのかが一目瞭然です。

「名もなき家事」だけじゃなく、「名もなき育児」も、たくさんありますよね。お茶を作り置きするとか、ゴミを分別するとか、オムツの在庫管理とか…。
これらをとにかくたくさん書き出して、授乳などの「これは私にしかできない」というものを書き出したうえで、お互いに色分けして分担してみるのも大事です。

パパの育児コミット度によっては、意外とたくさんやっていたことに気づく人もいると思いますし、逆に「やってるつもりだったけれど、そうではなかった」ことに気づく人もいます。
パパにしてみたら、「半分以上やってるつもりが、1/3以下だった」、なんてことも多いです。

小さなタスクまでこうして見える化することで、いかに多くのタスクがあり、それをどちらが抱えていたかが、客観的にわかります。
「私はこんなにやってるのに!」「もっとやってよ!」と感情的にぶつかるのではなく、可視化して理論的に分担を話し合うほうが、特に男性には伝わりやすいと思います。
出産後の環境の変化が起きたタイミングはもちろん、職場復帰の際の分担にもおすすめしています。

 

ーなるほど。具体的な指示とデータがあれば、話し合いもしやすそうです。

そうですね。
あとは、生物学的に男性は「頼られる」ことや「感謝される」ことで男性ホルモンが上がり、やる気が出るそうです。

たとえ最初はうまくいかなくても、「やってくれてありがとう」「助かった」と大げさなくらい褒めて、感謝を伝えていく。
そうやってパパの「父親としての自信」を育てていくのも、ママの戦略のひとつだと思います(笑)。

ママもパパも、完璧ではありません。
失敗も成功体験へのステップだと思って、どんどん委ねて任せていきましょう。

 

身体を動かすと、心も整う! 少しずつ体を動かして

ーそのほかにも、産後の心身の悩みを解決する糸口は、何かありますか。

産褥期、産後1ヶ月検診で問題がなければ、少しずつ身体を動かすこともおすすめしています。
心と身体はつながっています。身体がスッキリすると、不思議と心も軽くなるんです。

特に産後は、妊娠中の運動不足や筋力低下に加え、育児による前かがみの姿勢で身体が凝り固まっています。
そのままにしておくと体力も落ち、メンタルも落ち込みやすくなります。

私自身、産後5ヶ月の時に児童館でバランスボールに出会ったのがきっかけで、今はバランスボールのインストラクターをしています。
バランスボールをはじめるまでは、毎日なぜかイライラして、ただひたすら育児に耐え、夫の帰りを待つだけの日々でしたが、身体を弾ませて運動したら、疲れが吹っ飛んで「なんか頑張れるかも!」と前向きになれたんです。

 

ーバランスボールは、産後のママにも相性が良いんですね。

バランスボールの良いところは、赤ちゃんを抱っこしたままできること。
縦揺れの一定のリズムがお腹の中にいた時の感覚に近いようで、赤ちゃんがすぐに寝てくれるんです。
家の中でできますし、有酸素運動で体力もつくし、姿勢が整うことで骨盤ケアや肩こり解消にもなります。

私はバランスボールとの出会いで、そうして前向きになれましたが、軽いストレッチやヨガなど、人それぞれ、自分に合ったものが見つかると良いですね。

 

ママに「自分の人生」をもっと楽しんでほしい

 

ー最後に、今育児を頑張っているママ・パパへメッセージをお願いします。

一番伝えたいのは、「ママもパパも、本当に頑張ってるよ!」ということ。
当たり前のように感じるかもしれませんが、子どもの命を守り、毎日生かしているだけで、本当にすごいことなんです。

だから、もっと自分を褒めてあげてください。
そしてもうひとつ、「子どものために自分を犠牲にする」のではなく、できる限り周りにも頼って、うまく手を抜いて、自分のための時間も大切にしてほしいです。

ママやパパが笑顔で満たされていることが、結果として子どもにとっても幸せだと思います。

出産は、女性にとって「第2の人生」のスタートでもあります。
誰かのせいにするのではなく、自分の心身を整え、自分の機嫌を自分で取って、ママの人生も楽しんでいってほしいです。
少しずつでもいいので、周囲にも頼りながら、そんなママが増えていってくれたら嬉しいなと思います。

 

***

 

「察して」を手放し、タスクを「見える化」する。少しの工夫と伝え方で、夫婦の景色は変わるかもしれません。

そして何より、「子どもの命を守っているだけで、本当にすごいこと」。岩井さんのこの言葉を、毎日頑張る自分自身にプレゼントしてあげてくださいね。

完璧じゃなくて大丈夫。
時には周りに頼りながら、ママやパパ自身の人生も楽しんでいけますように。

 

ライター 後藤麻衣子

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