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管理栄養士さんに訊く離乳食Q&A vol.4「“手づかみ食べ”の気楽な進めかた」

2023.03.15

悩みの尽きない子育て。

たくさんのママ・パパが抱えている大きな悩みのひとつが、「離乳食がうまく進まない」「食べない」という食事問題ではないでしょうか。

今回は、保育園で離乳食や幼児食の献立や調理を担当している管理栄養士のユキさんに、そんな離乳食の悩みについていろいろ質問してみました。

万能な解決策などない、正解のない難しい問題ですが「子育てを経験したひとりの親として、ひとつでも参考になれば…」と、インタビューに応じてくださいました。

 

教えてくれたひと
管理栄養士 ユキさん

管理栄養士、栄養士、介護食アドバイザー。大学を卒業後、高齢者施設で管理栄養士として勤務したのち、保育園へ転職し、園内の給食室にて乳・幼児食を担当。現在は保育園で離乳食を担当。2児の母。

手づかみ食べは、成長過程の大切な階段のひとつ

ー後期〜完了期には、いよいよ手づかみ食べも始まりますね。

離乳食のステップとして大事なこととはわかっていても…いやはや、大変な時期ですよね(苦笑)。食べ物をぐちゃぐちゃに触って投げるとか、豪快につかんで食べることで床が汚れるとか、イライラしてしまうこともあると思うんですが…。でもやっぱり「手でつかんで食べたい」という意欲は食べ物に興味があるからこそなので、とても大切な成長の証ですし、尊重したいところです。

 

ー手づかみ食べは、どうして大切なんでしょう。

赤ちゃんは、食べもの以外にも口に運ぼうとしますよね。手で触って「どんな感触かな」「どうやったら食べれるかな」「思ったより固いな」とか、そういう好奇心で、まず触って、それから口に運んでいます。

食べものの感触を楽しみながら学んでいる証拠。また、手づかみ食べは脳の発達にもいい影響があるんだとか。自由に手づかみ食べを楽しめる環境をつくってあげることはとても大事です。

ただ、「手で掴んでぐちゃぐちゃにして、結局食べない」みたいなことも多々あると思うので、準備をしている方としては心が折れるのは重々理解できます。

「さわるのおもしろいね」「一口でも食べられたね!」と声がかけられるくらいの余裕が持てたら、理想ですね。

 

ーとは言え、現実はなかなかそうはいかないですよね。ユキさんはどんな風に乗り越えましたか?

理想論ばかりを述べましたが、そういう私もだいぶ、イライラしてましたよ(笑)。でも絶対、いつかはその大変な時期も卒業して、スプーンで上手に食べてくれるようになります。今だけは我慢!と思うしかないですね。

ひとつだけ、救いがあるとしたら、そのぐちゃぐちゃな手とか口とか、あとは大惨事のテーブルや床の写真を撮っておくと、未来の自分と子どもへのプレゼントになります。実際私も、成長した我が子と「なにこれ〜!ひどい(笑)」と、一緒に見返しながら笑い合える日が来ました。

渦中にいると必死すぎて、写真なんて全然撮ってなかったんですが、唯一残っている数枚の写真を見ながら、息子本人がゲラゲラ笑っていました。今となってはもっと撮っておけばよかったな、と思っています(笑)。

 

ーそういう乗り越え方、とても参考になります!

写真を撮ったり、誰かに話したりして、できるだけ客観視できるように、もう楽しむしかないな、と(笑)。赤ちゃんもきっと、ママやパパが楽しい方が嬉しいし、食事の時間が楽しみになるんじゃないかなと思います。

どうしても理想論になっちゃいますが、本当に今まさに離乳食と奮闘されているママやパパはすごいな、と心から尊敬しています。

大変な時期も写真に残しておけば、一緒に笑える日が来ます。

離乳食を食べてくれないときは、どうする?

ーもうひとつ、「離乳食を食べない」という永遠の課題については、どんなふうに乗り越えていくのが良いでしょうか。

特に手づかみ食べの時期に「触っただけで食べない」ってことも、よくありますよね。準備しているのはママやパパなので「食べない」「無駄になっちゃった」というところばかり目が行ってしまいがちなんですが、「興味は持っているみたい、今はこの段階なのね」「今日は楽しく触れてよかったね」みたいな感じで、それをOKだと捉えられると、もしかしたら少しは救われるかもしれません。

「こんなにも食べなくて大丈夫か?」とか「足りてるのかな?」とか、そういう気持ちももちろんありますが、やっぱりお腹が空いたら人間、食べるんです(笑)。

たとえば昼食に準備した一食分、全く食べなかったとしても、おやつや夕飯の頃にはおなかが空いてきて食べたなら、それは「そういう日だったんだな」と。昼の一食分を食べなかったことを一日中ずっと心配していても、心が持たないので…。と、言うのは簡単なんですが、そう割り切るのはなかなか難しいことも承知しています。

「食べない」時って、ママやパパも必死ですし、毎日毎食、赤ちゃんと1対1だと本当に大変です。そんなときには周囲の大人に助けを求めたり、心配になってきたら専門家の意見を求めたりして、赤ちゃんの食事を複数人で見守れる機会を、少しでも増やしていけたら良いですよね。

 

***

 

今回は、手づかみ食べ後期〜完了期の、ユキさん流の乗り越え方についてお聞きしました。

必死なときの写真や動画は、未来の自分と子どもへのプレゼントにするためにぜひ残しておきたいですね。

これで、離乳食編はむすびとなります。

次は幼児食について、引き続きユキさんにお聞きしていきます。続編をお楽しみに!



これまでの記事

管理栄養士さんに訊く離乳食Q&A vol.1「離乳食をはじめる前に」

管理栄養士さんに訊く離乳食Q&A vol.2「離乳食開始のタイミング」

管理栄養士さんに訊く離乳食Q&A vol.3「栄養バランスの考えかた」

 

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Profile

管理栄養士

ユキ

管理栄養士、栄養士、介護食アドバイザー。大学を卒業後、高齢者施設で管理栄養士として勤務したのち、保育園へ転職し、園内の給食室にて乳・幼児食を担当。現在は保育園で離乳食を担当。2児の母。