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管理栄養士さんに訊く幼児食Q&A 後編「我が子の偏食、どう対応する?」

2023.05.17

離乳食を経て、幼児食に移行してからも「好きなものばかり食べる」「栄養バランスが気になる」など、悩みの尽きない我が子の食事問題。

保育園で離乳食や幼児食の献立や調理を担当している管理栄養士のユキさんに、幼児食の悩みについていろいろ聞いてみました。

正解のない問題ですが「子育てを経験したひとりの親として、ひとつでも参考になれば…」と、インタビューに応じてくださいました。

 

教えてくれたひと
管理栄養士 ユキさん

管理栄養士、栄養士、介護食アドバイザー。大学を卒業後、高齢者施設で管理栄養士として勤務したのち、保育園へ転職し、園内の給食室にて乳・幼児食を担当。現在は保育園で離乳食を担当。2児の母。

*ユキさんの離乳食に関する記事はこちら
管理栄養士さんに訊く離乳食Q&A vol.1「離乳食をはじめる前に」

 

「園では食べるのに、家では食べない」問題

ー「保育園では野菜を食べるのに家では食べない」という声をとてもよく聞きますが、ユキさんの園でもありますか。

すごく、多いですよ。みんなそうなんですよね。

これってきっと、環境だと思うんです。お友達が食べてるところを見て「食べてみよう」って食べてみたりとか。気が張ってる子も多いのかな。

あとは、その子が苦手な食材って先生も把握していて、すごく少量でも食べたらたっぷり褒めてくれるんですよね。

シンプルですけど、ほんの一口、ほんの少しでも食べることができたとき、信頼している大人から大げさなくらい「たくさん褒めてもらえる」っていうのは、本人にとっても自信につながる、すごく大事なことだと思います。

 

ー子どもが食べないものは食卓からどんどん遠ざかってしまいがちで、家庭では食べる機会が少ないかもしれません。

「うちの子はブロッコリーが嫌い」「魚が嫌い」っていう経験をすると、もう食卓に出さなくなるんですよね。わかります、残されるのがわかってて出すのは、もったいないしメンタル的にもやられますから(苦笑)。

うちの子も食べムラがあったので、お子さんの偏食で悩んでいるママやパパの気持ちがとてもよくわかります。

でも、「この子はこれが嫌いだから」と取り除いたり、その後一切食卓に出てこないようにするのではなく、離乳食と同じで根気よく、忘れた頃にまた試してみてほしいです。

食べなかったのは嫌いなんじゃなくて「たまたまその日は気分じゃなかった」ってこともあるんですよね。

忘れたころにしれっと出してみると、意外と食べたりするので、ぜひやってみてください。

ー苦手克服のための、コツやアイデアがあれば教えてください。

よく言われることですが、野菜だったら一緒に育ててみるとか、一緒にスーパーや八百屋さんへ行って食材を見せてあげるとか。

あとは、簡単なお手伝いをお願いして「◯◯ちゃんがつくったこのお料理おいしいね!」という展開にするのもいいと思います。

 

ー「食事中に席を離れてしまう」という問題もありますよね。

ありますね。すぐに集中が切れてしまって、なかなか食が進まなかったり。

うちの子も、食に対する執着心が全然ないタイプで。全然食べてくれなくて、よく席を立ってました。

食事でも遊びでも、子どもが集中できる時間って結構短いんですよね。個人差はかなりありますが、目安としては長くても30分までだと思っています。

食事に飽きないような声かけをすることも効果的だと思います。

「早く食べなさい」ばかりではなく、「このお皿、ピカピカにしよう」とか「お皿に絵が描いてあるねえ、何が描いてあるかな?」とか、違う目的を気にかけさせてあげたり。

テレビなどがついていない、集中できる環境を整えて、声かけも工夫してみて、それでもどうしても立ってしまうなら、もうそれはしょうがないかな、と私は一旦諦めます(笑)。

「今は気分じゃないのかな、お腹がすいたらまた食べるだろう」と。

 

私も一人目のときは特に、なかなか割り切れなくて悩んでいた時期もありましたが、それぐらいの気持ちで、気長に我が子の気分とつきあっていくことが大事なのかも…と、今振り返るとそう思います。

同い年の子でたくさん食べる子がいると焦ると思いますが、まずは「いつかはきっと食べるようになる」と気長に地道につきあっていきましょう。

それでも、発育が心配なほど食べなくて困るということであれば、「ごはん外来」や「偏食外来」といった専門外来があるので、そういうところで相談してみるといいかもしれません。

 

ー子どもと一緒に行く外食は、何才くらいから可能でしょうか?

明確に「何才からOK」という基準はないのですが、味覚が形成されていく大事な時期は3才ごろまでと言われています。

0〜3才までのあいだに濃い味に慣れすぎてしまうと少し心配なので、その辺りに気をつけながら利用したいですね。

離乳食や幼児食を準備されているお店もあると思うので、そういうところを積極的に選んだり、あとは大人と同じ味のものを取り分ける場合でも味が薄いところを取り分けたり、スープなどは水で薄めたり、という工夫ができると良いと思います。

濃い味付けっておいしいですし、よく食べたりするのでついそのまま与えてしまいがちですが、将来の味覚のことも考えて3才までの大事な時期は工夫して過ごせると理想ですね。

情報に振り回されず、使い倒しながら乗り越えて!

ー離乳食編からいろいろお聞きして、とても参考になりました。ありがとうございました!最後に、今子どもたちの食と奮闘するママやパパへのメッセージがあれば、お願いします。

今って、SNSが発達して情報過多な時代なので、ママやパパのもとにいろんな情報が入ってくると思うんですよ。でも、それを全部鵜呑みにしていると理想が高くなりすぎて、悩みすぎてしまうかもしれないな、と思っています。

情報過多な現代をネガティブに捉えるのではなく「これを試してダメだったらあっちの方法を試してみよう♩」くらいの軽い気持ちでポジティブに捉えて、鵜呑みにしすぎず、いろいろ試しながら進めていってもらえたらいいんじゃないかな、と思います。

食事だけでなく、悩みが尽きない大変な時期だと思いますが、そんな日々を我が子と振り返りながら一緒に笑い合える日がきっと来ると思うので、できる限り楽しみながら、どうかがんばって乗り越えてください。心から応援しています。

 

***

 

心強いメッセージ、ありがとうございました。

離乳食期から全6回にわたって続いてきた「管理栄養士さんに訊く」シリーズは、これにて最終回です。

管理栄養士のユキさん、貴重なお話や体験談をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

栄養管理士ユキさんのこれまでの記事はこちら

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Profile

管理栄養士

ユキ

管理栄養士、栄養士、介護食アドバイザー。大学を卒業後、高齢者施設で管理栄養士として勤務したのち、保育園へ転職し、園内の給食室にて乳・幼児食を担当。現在は保育園で離乳食を担当。2児の母。