「もしかして、周りの子に比べて、歩き始めるのが遅いかも……?」と、わが子の成長に不安を感じたことはありませんか。
今回は、yamatoyaアンバサダーのSenaさんにご協力いただき、理学療法士として活躍中のAkiさんにお話を伺います。
Senaさん自身も看護師で、医療従事者同士の夫婦。ですが、Senaさんも、歩き始めがゆっくりな我が子の成長に、小さな不安を感じていた一人でした。
そんな時、Akiさんは息子さんの成長にどう向き合い、どう工夫を凝らしたのでしょうか。
専門職としての知見はもちろん、親としてのリアルな体験を交えながら、納得のいく「身体づくりと靴選び」について、詳しくお聞きします。
大切なのは「教え込む」ことではなく「待つ」こと
ーまずはAkiさんご本人のことをお聞きしても良いでしょうか。
普段は病院の整形外科で理学療法士として勤務しながら、不定期で整体などの仕事にも携わっています。家庭では、看護師の妻(Senaさん)と一緒に、2才の息子を育てるパパです。
「福祉住環境コーディネーター」の資格も持っているので、単に身体の動かし方を見るだけでなく、家の中をどう整えたら子どもが自発的に、かつ安全に動き出せるかといった「環境づくり」の視点も大切にしています。
仕事では大人の患者さんを相手にすることが多いですが、わが子の成長を間近で見守る中で、理学療法の知識を育児にどう還元できるか、僕自身も試行錯誤しながらいろいろ実践しています。
ー今日は、子どもの歩き始めの時期のことについてお聞きしたいと思います。息子さんが歩き始めたのは、いつごろでしたか。
8ヶ月頃にはつかまり立ちをしていたのですが、そこから先がなかなか進まず……。
初めて立ったのが1才2ヶ月頃で、歩き出したのは1才3〜4ヶ月頃でした。決して早くはなく、わりとゆっくりめな子でした。
妻は、つい周りの子と比較して「あれ、ちょっと遅いかも……」と、何かと検索して心配していた時期もありましたが、僕としては「本人のペースがあるから、焦らなくていいよ」と伝えていました。

ーそれは心強いです。どうしても周囲が気になって、焦ってしまうママやパパも多いと思いますが、Akiさんとしてはどのような見解なんでしょう。
一人ひとり発達の個性があるので、育児書などに書かれている目安から少々遅れることがあっても、そんなに焦らなくていいというのが、僕の正直な感覚です。
無理に練習をさせてプレッシャーをかけることで、逆にトラウマを与えてしまったりする方が心配ですからね。
実は、立つ前の「ハイハイ」や「ずりばい」といった動作も、体幹を鍛える上で非常に重要です。
こうした前提となる動きが未確立のまま無理に立とうとすると、重心をうまく制御できず、歩き始めたときに転んでしまうリスクが高まるとも言われています。
息子の場合も、まずは仰向けから寝返り、四つ這いといった段階的な発達をしっかり踏んでいるかを確認しながら見守っていました。
ー歩き始めてからは、何か練習などはしましたか。
特別な「歩く練習」のようなことはしていません。
人間は教えられて歩けるようになるわけではなく、本能的な動きや経験の積み重ねで習得していくもの。その動作を、あまり手を出さずにひたすら見守っていた、という感覚です。
ひとつ、意識して実践していたのは、つかまり立ちを始めた頃から特に意識していたのは、本人の「立ちたい」「動きたい」という自発的な意欲を引き出す環境づくりです。
例えば、興味を引くおもちゃを少し高い位置に置いてみたり、手を伸ばしたくなるような配置にしてみたり、といった工夫です。
大人が無理やり立たせ、無理やり歩かせるのではなく、本人が自分の意思で動きたくなる仕掛けを作ってあげることを重視しました。

ーなるほど。興味から来る「自発的な動き」を導く環境が大切ですね。
いざ立てるようになってからは、立ち方などをサポートする際に気をつけていたポイントはありますか。
それも基本的には本人任せで構いませんが、あえて言うなら、「補助は最小限に留めること」でしょうか。
バランス感覚というのは、まず視覚から安全を確認し、その次に足の関節で傾きを調整することで養われていきます。
そのため、大人が過度に手助けをすると、その子本来のバランスの取り方が身につきにくく、変な癖がついてしまうこともあるんです。
赤ちゃんや幼児は、まだこうしたバランス機能が未熟です。
わが家では裸足の状態を基本にして、足裏でしっかりと地面の感覚を掴めるようにしていました。
これは頭で考えて覚えるというよりも、何度も繰り返す体験を通じて身体に覚え込ませていく、本能的な学習をするために効果的だと考えています。
ーなるほど。心配ですぐに手が出てしまいますが、見守る気持ちが大切なんですね。
そうなんです。
もし手助けをするなら、本人が立とうとした時にお尻を軽く押して、重心が自然と前へ行くようにサポートしてあげてください。
それであれば、バランスの取り方を邪魔せずサポートできると思います。
あとは後ろに転んだ時のために、周囲に硬いものを置かないといった、安全な環境を整えることも、支援の基本になります。
危険がない状態を整えたら、あとは子どもの思うままに自由に動いてもらうのが一番いいと思います。
靴は「最後の最後」でOK。納得のいく選び方の基準
ー歩き出す時期になると、靴選びも気になります。ファーストシューズは、いつ頃から用意すべきでしょうか。
リハビリテーションの考え方では、足の裏からの感覚をダイレクトに受け取れる「はだし」の状態が一番です。
靴や靴下を履くとどうしても足裏の感覚が鈍ってしまいますし、小さな赤ちゃんなら尚更。ですので、しっかり歩けるようになるまでは無理に靴を履かせる必要はありません。
靴は歩行が安定した段階で、用意すればいいと考えています。
ー「歩くために、まずはファーストシューズ!」と考えがちですが、まずは素足からなれていくことが大切なんですね。
そうなんです。
ただ、その話とは別で、いきなり外で靴を履かせると嫌がる子が多いのは事実なので、わが家ではプレシューズとして靴下一体型のものを室内などで履かせてみたりして、あらかじめ「履く感覚」に慣れさせていました。
そのおかげで、ファーストシューズへの移行はスムーズでした。
ーAkiさんが靴を選ぶ際に、気をつけているポイントを教えてください。
まず何よりも「軽さ」です。まだ脚力の弱い子どもにとって、重い靴は足の運びを阻害し、疲れや転倒の原因になります。軽い靴の方が足が上がりやすく、本人も歩くのが楽しくなるはずです。
次に「柔軟性」と「つま先の広さ」ですね。
インソールが硬すぎず、足の指が自由に動かせるくらい広めのものを選んでください。足首の動きを邪魔しないことも大切です。
大きさや軽さ、柔らかさなどは、とにかく裸足と比べたときの変化が大きくならないように、できる限り自然な状態で歩けるものをチョイスしてあげると良いと思います。
サイズについては、「長く履かせたいから」「すぐに大きくなるから」と、つい大きめの靴を選んでしまいがちですが、歩き始めこそ、ぴったりサイズを準備してあげましょう。
ぶかぶかだと足が固定されずに動きづらくなるので、もしかしたら靴が嫌になってしまうかもしれません。
つま先にほんの5mmほどの余裕があるくらいの、ほぼぴったりサイズが理想です。
昨今はショッピングモールに入っている、子ども靴の専門店などで、細かく足の採寸がしてもらえるので、そうした靴のプロの見解もぜひ参考にしてみてくださいね。

「失敗から学ぶ」ことが、豊かな発達につながる
ーこれから歩き始めるお子さんを持つママパパへ、メッセージをお願いします。
一番お伝えしたいのは、過保護になりすぎず、本人の「やりたい」という興味を邪魔しないことです。
わが家では、出血したり救急車が必要なほどの大怪我でない限り、多少失敗したり、転びそうなときも、それも経験だと思って過度には止めません。
自由な遊びの中での失敗こそが、子どもにとっては「ここは危ないんだ」「こうすればバランスが取れるんだ」と身体で学ぶ貴重なチャンスになります。
本当に危険な場合は別ですが、大人が先回りして小さな危険を排除しすぎてしまうと、逆に「危険を学ぶ」機会がなくなってしまいます。
目の届く範囲でしっかりと見守りながら、のびのびといろいろなことに挑戦させてあげてください。
その好奇心と試行錯誤の繰り返しが、結果として健やかな運動発達を促してくれるはずです。

***
「歩く」という一生モノの土台を作る時期だからこそ、ついつい「早く、正しく」と焦ってしまいがち。
どんなことでも、大人が先回りして教え込んだり危険を排除しすぎたりするのではなく、子どもが自発的に一歩を踏み出したくなるような環境を整え、見守りながら待つことの大切さを教えていただきました。
Akiさん、貴重なお話をありがとうございました。
ライター 後藤麻衣子