オムツが取れたあと、我が子の頻繁なおねしょに悩みを抱えているママやパパは少なくありません。
寝具を洗いながら「いつ改善するのだろう?」と不安になりますが、実はおねしょが長引くのには、体の中のホルモン分泌や膀胱の発達といった、医学的な理由が大いに考えられます。
今回は、愛知県安城市にある「のむらこどもクリニック」院長、野村武雅先生に、子どもの夜尿症についてインタビュー。そもそも「夜尿症」とは何なのか、治療についてなど、夜尿症治療の長いキャリアを持つ野村先生にじっくり教えていただきました。
2026.08.12
オムツが取れたあと、我が子の頻繁なおねしょに悩みを抱えているママやパパは少なくありません。
寝具を洗いながら「いつ改善するのだろう?」と不安になりますが、実はおねしょが長引くのには、体の中のホルモン分泌や膀胱の発達といった、医学的な理由が大いに考えられます。
今回は、愛知県安城市にある「のむらこどもクリニック」院長、野村武雅先生に、子どもの夜尿症についてインタビュー。そもそも「夜尿症」とは何なのか、治療についてなど、夜尿症治療の長いキャリアを持つ野村先生にじっくり教えていただきました。
《教えてくれた人》
ーそもそも「夜尿症」とは、どんな症状を指すのでしょうか。おねしょとは違うんですか。
「おねしょ」は、どなたも聞き馴染みがあると思いますが、「夜尿症」というと、知らない人もいるかもしれません。
違いは、年齢と症状の頻度です。乳幼児期の「夜、寝ている時におもらしをしてしまった」は、単なるおねしょですが、5才以降も何度も続く場合は「夜尿症」を疑ってもいいと思います。
日本夜尿症学会や日本小児泌尿器科学会では、「5才以降で、月1回以上のおねしょが3か月以上続く状態」を、「夜尿症」と定義しています。
当院には夜尿症外来がありますが、5才に満たない子が来院した場合は、一度5才になるまで様子を見てみましょう、とお話ししています。
ーそもそも、昼と夜では、子どもの体の状態は違うのでしょうか。
昼の活動時と夜の就寝時を比べると、ホルモンの働きが大きく異なります。
赤ちゃんの頃は、昼夜を問わずいつでもオムツにおしっこをしますが、成長するにつれて、夜寝ている間につくられる尿の量を減らす「抗利尿ホルモン」というホルモンが、夜間に分泌されるようになります。
ただ、このホルモンが分泌される時期には個人差があります。
多くの場合は4、5才頃から十分に分泌されるようになり、自然と夜のおねしょをしなくなりますが、中には6才を過ぎてもホルモンの分泌が追いつかず、そこで差が出てしまうことがあります。
夜尿症は、このホルモンが一時的に足りないことで、就寝時におしっこが出てしまうケースが多いです。さらに、膀胱におしっこをためておける量や、膀胱の大きさにも個人差があるため、これらの原因が重なり合っていることも考えられます。
ホルモンについては、年齢が進めばだんだんと自然に分泌されるようになることが多いため、心配はいらないのですが、分泌が少ない時期に、お薬でホルモンを補充するような治療法があります。
ー夜尿症外来には、何才くらいの子が受診することが多いでしょうか。
小学校の入学を機に受診される子もいますし、林間学校や修学旅行などの宿泊を伴う学校行事を控えた小学校高学年の時期の子も多いです。
さらに、中学生や高校生、中には大人になっても悩んで治療を続けている方も、もちろんいらっしゃいます。
ただ、大人になると、悩んでいても「恥ずかしい」という気持ちが先に立ち、なかなか相談や受診に至らないことも多いようです。
子どもはもちろん、大人の方にもぜひお伝えしたいのは、おねしょが続くのは本人の「がんばりが足りない(なまけている)」わけでも、親御さんのしつけのせいでも決してない、ということです。もちろん、恥ずかしいことでもありません。
単に、水分をコントロールするホルモンが分泌されにくいという、いわば「体質」によるものです。このことを正しく理解して、毎日の暮らしや気持ちが少しでもラクになるよう、前向きに対策をしていくために夜尿症の治療があるのだと思っています。

ーどのような治療を進めていくのですか。
クリニックによって考え方が異なることもありますが、基本的な治療法ではまず、おねしょの原因を探ることから始めます。
原因が「膀胱にためられるおしっこの量が少ないから」なのか、「ホルモンの分泌が少なくて夜間におしっこがたくさん作られてしまうから」なのか、それともその両方なのか、などを見極めるためです。
外来で、日中に思い切り我慢したときのおしっこの量を測ったり、夜間のおしっこの量を調べるために朝のおむつの重さを自宅で量っていただいたりして、その数値を元に確認していきます。
原因がある程度わかり、いざ治療をスタートする際には、「どんな治療を、どれくらいの期間続けることになるのか」という見通しを、親御さんにしっかりとご説明するように心がけています。
夜尿症の治療は、だいたい1〜2年ほどかかることが多く、毎日のお薬の管理など親御さんのサポートも必要になるからです。
例えば、ホルモンが足りない場合はお薬で補充する治療を行いますが、これはお薬の力で治しているわけではありません。足りないホルモンを一時的に補ってあげている、いわば自転車に補助輪をつけているようなイメージです。
補助輪をつけて一時的にサポートしている間に、お子さんの年齢が進み、自然と自前のホルモンが十分に分泌されるようになるのを待ちます。そして、おねしょがほとんどなくなった段階で、そっとその補助輪を外してあげるのです。
その頃にはきっと、お子さん自身にも「おねしょをしなくなった」という自信がついています。
もちろん、ホルモン治療に限らず、お一人おひとりの原因や状況に合わせて、その子に最適な治療法をご提案しています。
ちなみに、当院「のむらこどもクリニック」では、開業した2018年からずっと、夜尿症外来を続けています。今は夜尿症外来がある小児科もよく聞くようになりましたが、当時は今ほどの認知度はなく、でも困ってる人が多いということは知っていたので始めたという経緯があります。
ー先生が夜尿症治療で大切にしていることを教えてください。
おねしょはいつか、きっと良くなるもの。
それが早いか遅いか、という個人差があるだけです。
ですから「5才になったから絶対にすぐ受診しなければならない」と、厳しく捉えすぎる必要はありません。
私が夜尿症治療の根幹として一番大切にしているのは、「親子の関係を少しでも良くしたい」ということです。
朝起きたときにシーツや布団が濡れていると、ただでさえ忙しい朝の時間帯に、重労働な家事がひとつ増えてしまいます。心に余裕が持てず、ついお子さんを叱ってしまうこともあるはずです。
たとえ、おねしょに対して本人に怒鳴ることはしなくても、親御さんがイライラしながらバタバタと寝具を洗う姿を見て、お子さんは「自分が悪いことをしてしまった」「おねしょはダメなことなんだ」と、子どもながらに自分を責めて深く傷ついてしまうことも、少なくありません。
こうした日々が繰り返されるのは、親子双方にとって、とても辛いことです。
私は、夜尿症の治療を、単におしっこを止めるためだけのものではなく、「親御さんの負担を減らし、お子さんの自尊心(プライド)を守るためのひとつの選択肢」だと考えています。
治療自体も、大きな副作用があるようなものではありません。治療によって毎朝のイライラやストレスがなくなり、親子が笑顔で過ごせる朝が増えるのであれば、お互いにとってとても大きなメリットがあると思っています。

ー寝る前の水分量を調整するなど、自宅でできることはあるのでしょうか。
「おねしょをしないために、寝る前は水分を控える」などはよく言われますが、夏場はどちらかというと脱水の方が心配ですし、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。
冒頭にお話ししたように、おねしょの原因は、寝る前に水分をたくさん摂ったことばかりではなく、夜間の尿量をコントロールするホルモンが一時的に足りていないことがほとんど。ですから、毎晩の水分量に過剰にハラハラする必要はありません。
おねしょは、本人のなまけでも、保護者の責任でもありません。
「体質の個人差なんだ」という正しい知識を知るだけで、ママやパパの心構えや、朝のお子さんへのまなざしもきっと変わるはずです。
ー子育てに奮闘するママやパパへ、伝えたいことはありますか。
親子で受診された際、私は子ども本人に向かって直接「これは気持ちの問題じゃないからね。ホルモンのせいだから、君のせいじゃないよ」と声をかけるようにしています。
「おねしょをしてしまう自分が悪いんだ」と、小さな胸を痛めて自信をなくしているお子さんもいます。保護者の方も、「私の育て方のせいかな」などと自分を責めたり、一人で不安を抱え込みすぎたりしないでください。
おねしょはいつか必ず良くなります。
まずは「いつかは治るもの」とおおらかに構えていただき、もし毎朝のお洗濯やイライラに限界を感じるようであれば、いつでも気軽に相談しに来てください。
一人で抱え込まず、専門家に相談すること、治療という選択肢を取り入れることで、親子の暮らしも、心も、きっとラクになるはずです。

***
子どものおねしょが毎日のように続くと、ママやパパもつい焦ったり、心に余裕をなくしてしまったりするものです。
けれど野村先生のお話を聞くと、おねしょは本人のなまけでも、ママやパパのしつけのせいでもなく、単なる「体質の個人差」なのだと分かり、心がすっと軽くなりました。
親子の笑顔を取り戻すために、5才をすぎたら治療という選択肢もあること、ぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。
一人で抱え込まず、まずはかかりつけの小児科や専門の外来へ、気軽に相談することから始めてみてくださいね。
野村先生、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
今回ご協力いただいたクリニック
のむらこどもクリニック
(愛知県安城市桜井町城向3-5-17)

小児一般外来/アレルギー診療/予防接種/成長発達/乳児健診/低身長・低体重/運動発達/夜尿症/頭のかたち外来/小児の睡眠外来/こどものこころと発達外来 など
https://www.sakurai-mc.jp/nomura-children/
ライター 後藤麻衣子
わたしたちは、子ども家具メーカー「yamatoya」です。
子ども家具をつくってきた歴史は、
子育て情報蓄積の歴史でもあります。
リアルな体験や役立つお話を
全国の子育て世代のみなさんと
共有したいと思っています。
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